トラックの荷台に乗ってパレードする千代皇=鹿児島県与論町で(岸本隆撮影)
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与論島初めての関取誕生に島中が熱狂した。夏場所での新十両昇進を決めた千代皇(21、ちよおう)=鹿児島県与論町出身、九重=が10日、師匠の九重親方(元横綱千代の富士)とともに与論島へ凱旋(がいせん)帰郷。発足したばかりの後援会の申込書は島の全2439世帯に配布された。午後2時半に役場前からスタートしたパレードには、平日にもかかわらず5423人の町民の半数近い約2000人が集まり沿道を埋め尽くした。
人口5423人の小さな島が、そっくりそのまま後援会になる。3日に発足した千代皇後援会の入会申込書が全2439世帯に配られた。南政吾町長は「ほとんどの町民が入ると思います。みんなで育てて、応援していかなくてはいけないでしょう」と声を弾ませた。たくさんの人に応援してもらいたい、と年会費も数千円程度と抑えめ。東京与論会や関西与論会など全国各地の出身者にも呼びかける。
与論島は昨年9月、10月と立て続けに台風の被害に遭い、35年ぶりの災害救助法が適用された。主要産業のサトウキビ栽培も、塩害で莫大(ばくだい)な被害を受けた。そんな中で、関取誕生は明るいニュース。千代皇は「少しでも元気になってもらえるように、活躍する姿を見せたい。勝ち越しはもちろんのこと、内容を重視したい」と意気込んだ。
午後からのパレードに大勢の島民が参加したのは期待の表れ。与論町役場前から茶花小学校まで420メートルの道沿いをエイサーに先導され九重親方とともにトラックの荷台に乗って声援に応えた。涙を流して手を振る、お年寄りやトラックまで駆け寄って千代皇の手を握る町民もいた。その数約2000人。九重親方は「島民のほとんどが来ていたように感じた。来ていなかった島民は“冬眠”してたのかな。与論島が1メートル沈むくらい来ると思っていたが、その通りになったね」と驚きを隠さなかった。
九重親方は、千代皇を「素直だが気持ちが優しい」と話し「燃える炎が出てきたら、もっともっと力が出る」と評した。これだけの応援を受ければ、千代皇も、来月の夏場所で燃えないわけにはいかないだろう。 (岸本隆)
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