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朝ドラ『あまちゃん』 クドカンが不安と迷いを明かす

2013年04月07日(日) 07:00
電子ナビ編集部

 4月1日からスタートしたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』。初回から20.1%の高視聴率を記録し、早くも「『カーネーション』以来の良作となりそう」との声も挙がっている。

 『あまちゃん』の脚本を手がけているのは、これが朝ドラ初挑戦の宮藤官九郎。若者を中心に絶大な人気を誇る宮藤だが、彼が得意とするサブカル的な小ネタの応酬やアクロバティックな展開が朝ドラでも見られるのか!? と、放送前より期待は高まっていた。そんな宮藤の朝ドラへの意気込みが語られているのが、『週刊文春』で連載中のエッセイをまとめた『え、なんでまた?』(文藝春秋)だ。

 昨年の5月、ちょうど脚本を担当することが発表されたときには、「少なくともあと1年半は死んだり捕まったり滞納できません」「プレッシャーだなあ」と不安を吐露している宮藤。半年間、月曜から土曜まで放送されるという量的な不安は当然ながら、質についても不安視。「僕の描く物語が果たして朝8時という時間にマッチするのか? しないと思う。明らかに夜用」と感じているらしく、試しに過去に手がけた『うぬぼれ刑事』を視聴。「情報量多すぎ、カロリーも高過ぎ。朝から五目焼きそば食べたような気分です」と自ら揶揄している。

 『あまちゃん』の舞台は岩手県北三陸。宮藤の実家も同じく東北の、宮城県栗原市。インタビューでは「震災があったから東北を舞台にしようと思ったのではありません」と語っているが、朝ドラ執筆前の2011年11月のエッセイでは、「フィクションの現場では、まだ何となく東北は触りづらいという空気があります。作り物という負い目からか足並み揃えようと周囲の出方を窺っている。そんな現状に東北出身者として漠然とですが違和感を覚え始めました」「自粛という名目で東北を無視してないか? フィクションとはいえ震災を“無いこと”にするのは違うんじゃないか」と、その思いの内を明かしている。

 しかし、「直接的に描くのはやっぱり抵抗がある」という気持ちも他方にあったという宮藤。そこで思い出したのが、イランの名匠であるアッバス・キアロスタミ監督の『そして人生はつづく』だったそう。この映画は、1990年に起きたイラン地震の5日後に、キアロスタミにとって代表作である『友だちのうちはどこ?』の主人公を務めた少年の安否を確かめるために監督自ら被災した村を訪ねた映画。これを観たときの宮藤の感想は、「拍子抜けするくらい和やかで牧歌的」。「作り手が予め理想の展開を抱いてそっちに導いたり、都合の良い部分だけを切り取ったりしないから人間の色んな側面が見える」と、災害を背景にしながらも“被災地”という型にはまった見方をしないことの大切さを感じたようだ。ちなみに、『あまちゃん』は2008年から物語がスタート。震災を描くかどうかについては未定とのことだが、もしも描かれるとすれば、宮藤がどのように表現するのかも注目だ。

 また、別のページでは「僕にとって作家生活は“あ、いいんだ”と“あ、ダメなんだ”の繰り返し。でもそれで良いと思っています。怒られたらやめればいい。怒られる前に控える必要はない」「何より作品を楽しんで欲しいので、これからも数少ない“あ、いいんだ”を目指して頑張ります」と綴っている宮藤。震災直後のエッセイには、メールで地元の家族の安否を確認し安堵した話とともに「被災地の、とは言いたくないので、東北および全国の皆さん。笑いのある日常を取り戻しましょう!」と締めている。

 たとえ宮藤のドラマがカロリー過多であっても、朝から笑えるのは幸福なこと。『あまちゃん』が日本を“笑いのある日常”に導いてくれることを、今後も大いに楽しみにしたい。

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