孤独死:大家さん向け保険広がる 修復費・家賃減補う
毎日新聞 2013年04月10日 22時05分(最終更新 04月10日 23時34分)
周囲の住民との関わりが薄い賃貸住宅での「孤独死」が社会問題化する中、大家向けの損害保険が広がりを見せている。部屋の原状回復費や家賃の減額分など大家の負担を賄うもので、加入する大家からは「独居の高齢者の入居が増えており、リスクを軽減できるのはありがたい」との声が上がる。同種の保険を扱う業者が増えている。
福岡市内にアパート3棟を持つ男性(50)は昨年7月、入居者の孤独死や室内での自殺に備える損害保険に加入した。保険料は家賃5万円以上10万円未満で1戸あたり月300円。1年契約の掛け捨てで大家が負担する。
きっかけは4年前に起きた高齢入居者の孤独死だった。壁紙や床板の張り替えなど清掃・改装費用は約200万円。入居者に身寄りはなく、費用の大半を負担した。「事故物件」として敬遠され、家賃収入にも響いた。
そんな時、入居者が死亡した場合に生じる空室期間の家賃や部屋の修復費用を補償する保険の存在を知り、「渡りに船」と加入した。その後、30代の1人暮らしの入居者が突然死亡し、保険が適用された。大家の男性は言う。「悲しい話だが、単身の入居希望者を受け入れる際には保険は必要と感じた」
入居者の孤独死に対応する保険は2011年ごろから本格的に商品化された。孤独死が社会問題化したことに加え、空き部屋の増加によって大家がこれまで入居を断ってきた高齢者を受け入れ始めたことが背景にある。
一般社団法人・日本少額短期保険協会(東京都中央区)によると、同種の保険を扱う業者は年々増加し、現在は約10社。協会の担当者は「掛け金が安く保険期間が短いのも好評の理由」と説明する。
福岡市の男性が入った保険「無縁社会のお守り」は、アイアル少額短期保険(東京都中央区)が11年8月に発売した。現在の契約戸数は約4000で前年から倍増。エース損害保険(目黒区)は、入居者の自殺・孤独死で管理業者が大家に支払う見舞金を補償する。一方、メモリード・ライフ(文京区)は60歳を超えた生活保護受給者らが入居する場合、本人の同意を得て入居者に生命保険を掛けている。一定の保険金が大家や管理業者に支払われる仕組みだ。