知日派トップが語る「安倍訪米」の注目点
ラスト・デミング・元国務省日本担当部長に聞く
民主党時代も無益ではなかった
2011年から2012年にかけての「2+2」(日米安全保障協議委員会)の共同発表を見れば、民主党が、日米同盟の基本的戦略目標を受け入れ、自民党が以前から同意してきた日本の役割と使命をも容認していたことがわかる。日米両国の間に隔たりはなかったのだ。これは非常に優れた成果であり、日米同盟の長期的な安定にとって極めて有益だった。民主党が政権に就いていた期間も、日米同盟にとって無益だったわけではない。
そしてその後、自民党が政権に復帰した。安倍首相は、個人としても、日米同盟を日本の外交政策の中心に戻すというシグナルを送りたいと考えている。
――オバマ政権にとって、会談の主な狙いは?
米国政府としては、日本は米国の幅広いアジア政策にとって不可欠であり、米国がアジア重視へとグローバル戦略の「バランスを見直す」うえで中心に位置づけている、という点を強調したいと思っている。オバマ政権は、日本が幅広い分野の課題、とりわけTPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする市場開放推進について、地域およびグローバルな舞台でもっと積極的に活動するようになってほしいと願っている。
参議院選挙が7月に迫る中、安倍首相がTTPをはじめとするさまざまな課題に十分に取り組めない、または多くを語れる立場にないことは、米国政府も理解している。しかし私は、米国が日米同盟にとって重要なTPPなどの課題の推進を重視している点を、大統領は強調すると思う。
――安倍首相は、オバマ政権に何らかの「土産」を持ってくることができるのでしょうか。現在の国内政治の状況では難しいように思いますが。
近年はそうした「土産」外交を脱しようという努力がなされてきた。とりわけ、今回の安倍首相の訪米のような初期段階の会談ではそうだ。安倍氏はわずか2ヵ月前に政権に就いたばかりだ。今回の首脳会談に期待されているのは、日米同盟のアジェンダ設定だ。今後、大統領と首相が、今年後半に予定されているG8サミットや東アジアサミットなどで再び会談する際に、もっと具体的な成果が得られる可能性はある。しかし今回の会談は、多くを期待する場ではない。