知日派トップが語る「安倍訪米」の注目点
ラスト・デミング・元国務省日本担当部長に聞く
――安倍首相は、首相就任前、歴史問題などに関してタカ派の発言をしていました。
1930年代および1940年代に起こったことに対する責任とその本質に関して、安倍氏が保守的な日本人の多くと共有していると思われる解釈について、一部の人々は確かに少し不安を感じている。米国政府内にいる人々の多くは、歴史は地域の国々の関係を悪化させる要因であり、外交の場に持ち出してもあまり有益ではない、と考えている。歴史の問題は、日本とアジア諸国、とりわけ韓国および中国との関係を悪化させる。
しかし、2006年の第1次安倍政権の際、安倍氏は中国および韓国に歩み寄ろうとして、靖国神社への参拝は控えた。安倍氏は優れた政治家だ。個人としてどんな見解を持ち、どんな衝動に駆られるとしても、安倍氏には日中関係、日韓関係、さらには日米関係を悪化させないように行動してほしいと、多くの人々は望んでいる。
歴史に関しては、「慰安婦」問題など、米国政府内に反響を呼ぶ問題がいくつかある。私が話をしたほとんどの人たちは、安倍氏が第1次政権当時と同じように振る舞うことを期待している。
――会談では、集団的自衛権もテーマになりますか。
集団的自衛権行使の問題は、日本人が決めることだ。米国政府内の多くの人々は、この問題について日本が前向きに動き出すことを望んでいる。そのタイミングと手法は、この地域の国家間の関係に重要な意味を持つ。しかしこれは、日本にとって長年の懸案であり、米国は大いに関心を寄せている。
安倍氏自身が、第1次政権で、この問題を検討する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長は柳井俊二元駐米大使)を設立したことが思い出される。柳井報告書に盛り込まれた考え方は概して、日本が日米同盟および平和維持活動において、より積極的な役割を果たす能力について論じていた。それらは日本の防衛体制の進化を示していたが、そこに大きな逸脱はなかった。