アメリカは「対等な日米関係」に興味なし
スタンフォード大学・ダニエル・スナイダー氏に聞く(下)
――中国側の態度にも変化がありました。
そのとおりだ。中国の外交政策が攻撃的な姿勢に転じたのには、オバマ政権も含めて、誰もが不意を突かれた。ブッシュ政権時には、ほぼ全期間を通じて、中国はアジア地域で"友好的な"外交を展開していた。ブッシュ政権がイラクとアフガニスタンの戦争に気を取られているという状況をうまく利用していた。この地域の国々と自由貿易協定(FTA)を締結し、攻撃的で横柄な態度は見せていなかった。
オバマ大統領は、政権発足当初、極めてソフトなアプローチで中国に臨んだ。人権問題について公然と批判することは控え、いろいろな分野で、中国政府との協力関係を模索した。オバマ大統領の政策は、日本の民主党が目指していたことと似たり寄ったりだった。
ところが2010年に入ると、中国は韓国の哨戒艦沈没事件で非協力的な態度を示し、米国空母の黄海への配備に異議を唱え、日本とは漁船衝突事件を引き起こした。中国は、米国、そして一定の範囲で日本がこの地域が果たす役割に、異議を唱えるような強硬姿勢をとった。これには誰もが不意打ちを食らい、愕然とした。
そこで米国は、中国に対し強い態度に出る方向へと舵を切った。それを最も明確に示すのは、ヒラリー・クリントン国務長官が2010年にハノイで行った演説だ。その後、南シナ海および尖閣諸島周辺で領有権をめぐる争いが目立ってきた。これらの領有権争いは以前からくすぶっていたが、中国が極めて攻撃的な態度で自己の主張を押し通そうとしているため、その重大性が高まっている。
――自民党の新政権は、中国にどう対応すべきでしょうか?
安倍首相は中国と外交上の協議を行うことに意欲を示している。野田政権の姿勢から大きく変化することはないだろう、と私は見ている。野田政権は中国に対し、バランスのとれたアプローチで臨んだ。中国に対して外交的に接触を試み、対話に引き込もうと努力する一方、毅然とした姿勢も示した。
米国は野田政権に対し、米国は日本を支援する用意があるが、日本が中国を挑発していると見られる場合には支援しない、というシグナルを送った。