アメリカは「対等な日米関係」に興味なし
スタンフォード大学・ダニエル・スナイダー氏に聞く(下)
――日本が中国、韓国の双方と領土問題でもめることは、戦略的に賢いとは思えません。
米国は、日本と韓国との間に緊張が生じたことにかなりのショックを受けた。日本と中国との間の緊張は理解しやすい。中国が既存の秩序に異議を申し立てているからだ。だが、米国にとって、ともに同盟国である日韓の緊張は、より厄介と言える。日韓の緊張は、米国がこの地域で遂行している戦略の妨げとなるからだ。
なぜ韓国、ロシアに妥協しないのか
ここで問題点をひとつ指摘しておきたいが、日本の政府関係者たちは、歴史問題や領有権問題を語る際に、中国と韓国とをひとくくりにする傾向がある。
米国の政府関係者たちが首をかしげるのは次のような点だ。つまり、日本はなぜ韓国と領有権を争うのか。なぜ中国に焦点を絞らないのか。なぜ、中国に対する日本の立場を強化する目的で韓国と妥協しないのか。
これは戦略的にしっかりと筋が通った見方で、私も含めて米国人ならこのように考える。ところが多くの日本人からは、次のような反応が返ってくる。
「いや、それは受け入れられない。これらはみな関連している。あるところで妥協する姿勢を見せれば、中国はそれを弱さの現れだと受け止める。したがって、何事にも譲歩することはできない」。
率直に言って、このような考え方は戦略的にばかげている。中国の動きを本気で懸念するなら、なぜ韓国と、そしておそらくはロシアとも、領土問題で譲歩しないのか。戦略的理由は善悪の判断とはまったく別物だ。
米国人はこんなふうに論理的に考えるが、紛争の中に潜んでいるアイデンティティの問題は見過ごしがちだ。
日本では総選挙の結果、安倍氏と自民党の歴史見直し主義者たちが政権に復帰したが、米国としては、日本政府が理性的な計算に基づいて行動するものと信じたい。しかし、政権への復帰を果たした見直し主義者たちは、アイデンティティ、プライド、歴史、感情、愛国主義など、戦略とは関係のない要素に駆られて動く可能性もある。
韓国についても同じことが当てはまり、それが事態を実に複雑にしている。