さすけの波乱万丈な日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2013-04-10

[]同人作家が自サイトに同業者作品のレビューページを作るとはがゆい思いをするという話

はじめに

かつて僕はフリーゲームのレビューページを自分のサイトに開設していた。僕はMoon Whistleというフリーゲームの作者である。

しかし、大変歯がゆい思いをしていた。ずっと黙っていたが、ちょっと思うことがあったので、書かせてもらう。

本題

僕も作品を作る人だ。なのにそれを完全に無視して他の作品ばかりを褒めるメールを送ってくる人があとを絶たなかった。他にも、同業者(他のレビューサイトの人)が宣伝8割に挨拶に来たのだが、僕がそのサイトに行くと、僕がライバル視している同列レベルの作品がずらりと紹介される中、僕の作品のレビューはない……それならわざわざ宣伝しにくるなよ、そんなことが何度もあってうんざりしていた。

たとえばトヨタの子会社の工場にあなたが勤務するとして、通勤にトヨタ以外の車を使うのはありだろうか。社会人なら答えはおのずと分かる。だが、その常識を持っているであろう人が、僕の作品(=うちの子)が紹介されておらず「よその子」ばかりをほめちぎっているサイトを平気で僕に紹介する。それが同人創作の世界の現実である。そんな無礼なのは、世間知らずの学生さんだけだと思うだろう、しかしこれが社会人にも多かった。

無理もない。レビューのページを見に来た大抵の人は僕の作品など知らない。僕がレビューしている「よその子」が好きなだけなのだ。僕のことなど、調べようともしないし、そもそも僕が創作者であることさえ知らないかもしれない。

僕は大変歯がゆい思いをしていた。僕の作品は人を選ぶとはいえ、エンターブレインのコンテストで受賞している、一応、それなりに知名度のある作品だと自負していた。それがここまで相手にされていなかったのか、と落胆した。

この気持ち、共感してくれる人は少ないかもしれない。当時、フリーゲーム作者とレビュワーを兼務していて、どちらでも名を挙げている人を見かけなかったからである。しかし、これは同人世界に共通の問題だと感じた、だからこそ言わせて貰う。

もしあなたが創作者でレビューページを自分のサイトに作るなら、あなたが同列、ライバル視している「よその子」ばかりが褒められて「うちの子」は8割がた完全無視されるだろう。同ジャンルのレビューページを作っている人が挨拶に来るが、その方のサイトを見に行くと自分が同列に思っている「よその子」がべた褒めされ「うちの子」が完全に無視されていることが8割である。そのことを覚悟しなければならない、と。

フリーゲームというのは同人の中でもフリーソフト、つまり無料の世界である。そこでは、プレイして反響をもらえることこそが最大の報酬である。それなのに、この仕打ち。善意を仇で返された気分だ。

そもそも僕が「よその子」の紹介を始めたのは、純粋にフリーゲーム界隈の賑わいに花を添えたいという思いがあったからである。だから、心から好きなゲームばかりでなく、あえてライバルとみなしている作品も紹介した。そして「よその子」を紹介する以上、そちらの評判を聞くのは予想がついていた。しかし、現実は僕の予想の斜め上を行った。まさかここまで「うちの子」の存在を黙殺されるようになるとは思いもしなかった。

なぜこうなったのか、僕なりに分析する。プレイヤーは、作者自身よりも、同好の志とつながりたいのだろう。作者に直接言いづらいことでも、ファン同士なら言いやすい、というわけだ。結果、作者は直接評価を聞かず、僕の耳に入るのは僕がレビューした作品、つまり僕がファンと思われている作品の話題ばかりになるんだろう。

でも、やはり腑に落ちない。「うちの子」の話題をしてもらえず、「よその子」の話題ばかりされて喜ぶ親(=作者)って、そんなにいるものなのか。だが、同人作品とそのレビューの世界はそういう「配慮」をプレイヤーに求めることはかなわない世界なのだ、と悟った。

ここまでのまとめ

  • 同人作者が自分の創作のジャンルのレビューサイトを開設すると、大抵「他所の子」ばかりが褒められ「うちの子」は見向きもされない。「うちの子」の話をしてもらえるの2割、残りはよその子、ライバル視している作品の話題である。
  • 自分と同列か格下だと思っている同人作品をあなたのサイトで紹介すると、あなた自身の作品より数倍反響が来る。
  • 他の同人レビューサイトの運営者があなたを同業者とみなして連絡を取って来るが、見に行くと「うちの子」の紹介はなく「よその子」ばかりが絶賛されていることが8割である。
  • あなたの「よその子」レビューを見てあなたに連絡をしてくる人の8割はあなたの作品をプレーしていない。あなたが創作をしていること知らない人さえかなりの割合いる。
  • 「よその子」を貴方に対してべた褒めしてくる人が「うちの子」を黙殺するのに耐えられない人は、レビューのページは作らない方がいい。

対策

ならどうするか。

自分のサイトではなく、投稿型のサイトに、いちレビュワーとして投稿するのが無難である。書籍におけるアマゾン読書メーターのようなサイトがフリーゲームにもある。ふりーむや、会員登録など若干敷居は高いがベクターがそれだ。こういうサイトにレビューを書き、サイトから自分のレビュワーページにリンクを張るだけにしておく。こうすることでフリーゲームへの貢献度は損なうことなく、純粋にその作品へのひとつのレビューとして、溶け込むことが出来るのだ。現に僕も、フリーソフト超激辛ゲームレビューに投稿する形になってから、上記の「よその子絶賛、うちの子無視」の連絡はこなくなった。

あるいはライバル作品など最初からレビューしないことだ。褒められると自分も嬉しくなる作品だけレビューすることだ。もちろん、これは消極的な解決策であり、ライバル作品も紹介した方が、その界隈全体の繁栄に繋がるのは間違いないが、それは相当歯がゆい思いをする覚悟が必要なリスキーなことなのである。大変残念な現実である。

おわりに

フリーゲームは作者とプレイヤーの距離が近く、それらの境界線が曖昧の文化だった。ゆえに、プレイヤーが作者となり作品を公開したり、僕のように作者がプレイヤーとして多くの作品を発掘したり、そういう動きが盛んであった。しかし、それが「よその子」の話ばかり聞かされるという状況を生んでしまった。これは同人特有の問題かもしれない。

僕は自分の作品にそれなりの自負があるものの、あまり自己主張するのは卑しい、もっと謙虚に、という姿勢で来たが、それがこのざまである。卑しくとももっと「自分は○○作者です」ということを、アピールして行くのがこの世界で生き残るための、そして歯がゆい思いをしないための知恵なのかもしれないと今では思っている。

余談

上記の10年以上も前の話をするきっかけになったのは、最近もらったメールである。古いフリーゲームが忘れ去られているのを残念に思い、今もレビューが残っているうちのサイトを評価してくれるものだったが、内容はまさに「よその子絶賛、うちの子無視」だった。やはり何らかの形にしておかないと、と思い、したためた次第である。

皆さんにとって、何らかのご参考になれば幸いである。

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