日台 民間漁業取り決めを締結4月10日 18時22分
沖縄県の尖閣諸島の周辺海域を対象とする日本と台湾の漁業交渉が4年ぶりに再開され、日本の排他的経済水域の一部を、双方が相手側の漁船の取り締まりを行わない水域とすることなどを盛り込んだ取り決めを結びました。
取り決めでは、島の領有権については踏み込んでいません。
1996年に始まった沖縄県の尖閣諸島の周辺海域を対象とした日本と台湾の漁業交渉は、島の領有権問題と絡んで、操業水域などを巡る双方の意見の隔たりが埋まらず、4年前から中断していましたが、去年11月から交渉再開に向けた予備会合や非公式の協議が続けられてきました。
日台双方は、この海域でのマグロ漁が今月下旬には盛んになることから、協議を急いでいましたが、10日、台北で4年ぶりに再開された交渉で正式に合意に達し、双方の窓口機関の代表が「日台民間漁業取り決め」に署名しました。取り決めでは、日本の排他的経済水域の中に、双方が相手側漁船に対し、漁業関連法令を適用せず取り締まりを行わない「法令適用除外水域」と、法令の適用除外とはしないものの、双方の操業を最大限尊重するなどとした「特別協力水域」の2つの水域を設けるとしています。
島の領有権については踏み込んでいません。
尖閣諸島を巡っては、中国が台湾に対し、連携して日本に対抗するよう呼びかけていますが、日本政府としては、長年続いた漁業交渉に決着をつけることで、中国と台湾の連携を防ごうというねらいがあるものとみられます。
一方、台湾の馬英九政権にとっては、島の領有権と切り離す形で日本の排他的経済水域の一部に漁業権という実利を確保したことになり、歴代の政権が積み残した難題を処理したと漁業者らにアピールできるうえ、対立を平和的に解決する姿勢を国際社会に示そうという思惑があるとみられます。
台湾の漁協は高く評価
沖縄県の尖閣諸島の周辺海域を対象にした日本と台湾の漁業交渉が合意に達したことについて、この海域で操業する権利を訴えてきた台湾の漁協は「漁業者の生活が改善される」と高く評価しています。
台湾北東部の宜蘭県の漁協は、去年9月、日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議して、所属する多くの漁船が魚釣島沖の日本の領海に侵入しました。
この漁協のトップの陳春生理事長は、日本と台湾の漁業交渉が合意に達したことについて、「日本側の取り締まりを恐れる必要がなくなれば、漁獲量が増え、漁業者の生活が改善されるだろう」と述べ、高く評価しました。
そのうえで、陳理事長は「漁業者が重視しているのは漁業権であり、主権の問題よりも生存する権利が大切だ」として、領有権を巡る問題には踏み込まない姿勢を示しました。
さらに、沖縄県の漁業者らが、この海域での操業を巡るトラブルの発生を心配していることについては、「取り決めによって双方の漁業者の間で基本的なルールが定まれば、今後、トラブルは生じない」と述べ、操業ルールを順守していく考えを強調しました。
沖縄の漁業者からは戸惑いも
尖閣諸島に近い沖縄県石垣市の漁業者からは戸惑いの声も聞かれました。
このうち、60代の漁業者は「政府は、交渉に入る前に、地元の漁業者の話をちゃんと聞いてほしかった。漁業者のことを考えないまま、交渉が進められているように感じられ、とても不満に思っています」と話していました。
また、30代の漁業者は「石垣島の近海で台湾や中国との境界の問題が出て来るのはしかたないとも思うが、政府には、まず第1に、そこで生活している漁業者の立場になってもらいたい。これ以上、自分たちの漁場が狭くなるのは困ります」と話していました。
一方、50代の漁業者は「話し合いでいい形になってくれれば、漁業者としても助かる。けんか腰ではなく、友好関係を持って漁ができるような形がいちばんありがたい」と話していました。
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