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福井のニュース  特集・女子中学生殺人事件 再審開始決定

再審取り消しに「長すぎる冬」 前川さん父、女子中学生殺人事件

(2013年3月7日午前7時17分)

拡大 再審開始取り消し決定を受け、手をつないで裁判所を後にする前川さん親子=6日、名古屋高裁前 再審開始取り消し決定を受け、手をつないで裁判所を後にする前川さん親子=6日、名古屋高裁前


 福井女子中学生殺害事件、最後の審判へ 福井新聞連載企画「再審取り消し」(1)

 無罪、有罪、上告棄却、再審開始決定、そして6日に名古屋高裁で示された決定取り消し―。前川彰司さん(47)は1987年の逮捕から26年間、二転三転する司法の判断に翻弄(ほんろう)され続けた。そばには常に父の礼三さん(80)がいた。弁護団は最高裁に特別抗告する。「やっていないものはやっていない」(彰司さん)「長すぎる冬」(礼三さん)―。無実を訴え続けた親子に終わりは見えない。2人が待望する“春”は訪れるのだろうか。(取材班)

 ■「愚の骨頂」

 長男の無実を訴え、ともに闘ってきた礼三さんも、歓喜と悲劇を味わってきた。「まさに青天の霹靂(へきれき)だった」(礼三さん)という彰司さんの逮捕時は54歳で、福井市の職員だった。辞表を書いたが「息子の犯行を認めたことになる」と提出せず、定年まで勤め上げた。

 事件発生時は彰司さんを交えて家族らとともに自宅で食事をしていたという。「証言しても親族ということでアリバイと認めてくれなかった」と語気を強める。

 2004年に亡くなった妻の真智子さんも逮捕について「おかしなことが起こった」と繰り返していた。「(妻は)床に入っては泣いていた」とつらい過去を振り返る。

 「当たり前で特に何も感じなかった」一審の無罪判決だったが、二審の有罪判決は「新しい証拠もないのに、なぜ百八十度違った判決が出たのか」。再審開始決定は「こんなにうれしいことはなかった」と司法判断が出るたびに、気持ちも大きく左右された。

 7年かけて勝ち取った決定に検察側は異議を申し立てた。礼三さんは「人間だから間違いはある。間違いを権威で押し通すのは愚の骨頂」と痛烈に批判していた。

 ■「元気出そうや」

 異議審決定の3日前、彰司さんが卒業証書を手に礼三さんの元を訪れた。一審無罪後、道守高通信制に入学したが、逆転有罪を機に退学。昨秋から17年ぶりに学んでいた。「学校を卒業したい」―。彰司さんが口にした言葉に礼三さんは「子の成長を願わない親がどこにいる」ともろ手を挙げて喜んだ。

 彰司さんは常々「やっていないことは自分が一番よく知っている」と話し、「本人が自信を持ってくれることが非常にうれしい」と息子の心身の成長に目を細める。卒業証書を手にした彰司さんから「長い間、迷惑かけてごめんな」と声を掛けられ、思わず胸がつまった。

 再審取り消し決定を受け「お父さん、元気出そうや」と、彰司さんから声を掛けられた。「再審無罪になるまで闘い続ける」と気丈に振る舞ってきた礼三さんだが、今回の決定には大きなショックを受け、会見場に姿を見せなかった。年齢的なこともある。最高裁での親子の闘いは厳しさが増すことも予想される。

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