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県警OB、再審報道で眠れなかった 前川さんの決定取り消しに安堵
(2013年3月8日午前6時54分)
前川さんを逮捕し、記者会見する当時の県警幹部ら。二転三転した司法判断に捜査員や関係者も複雑な心境をみせている=1987年3月29日、福井署
福井女子中学生殺害事件、最後の審判へ 福井新聞連載企画「再審取り消し」(2)
「(再審について)報道されるたびに眠れなかった」。事件発生当時、捜査に関わった元県警幹部が明かす。
事件から27年。関わった当事者たちもまた、二転三転した司法判断に心が揺れた。自らの捜査で集めた証拠や証言が、その基となっているだけに苦しみもあった。
「血を付けた服を着た前川君を見た」と供述した男性は「もう勘弁してほしい」と本音を漏らした。(取材班)
■真実は一つ
「弁護側の主張を理路整然と論破している。しっかり証拠を見ているし、よく精査されている」
1986年に起きた福井市の女子中学生殺人事件で前川彰司さん(47)の再審開始を取り消した名古屋高裁の決定内容を、捜査に携わった県警OBは満足げに話した。前川さんを持ち上げがちな報道を苦々しく思っていたから、なおさらだ。
前述の元県警幹部は「目撃者供述が変遷しているのは捜査官の誘導」と主張する弁護側に対し、以前は「むしろ弁護側が供述を翻すよう誘導したのではないか」と息巻いていた。しかし、2011年に再審決定が出てからは言葉少なに。弁護側の主張ばかりにスポットが当たる現状に不満を抱いていた。
別の県警OBは「前川さんと一緒に現場に行き、前川さんから犯行を打ち明けられた関係者の供述は一貫している」と指摘。今回の決定に「真実は一つだと信じていた」と胸をなで下ろす。
「司法解剖時の計測で刃物の大きさと傷口に誤差が生じることもある」とした上で、「(弁護側が主張する)第3の凶器はあるはずがない。(存在を認めなかった名高裁の)決定は妥当で、ようやく捜査が認められた」と話した。
■罪悪感も
弁護側が「変遷があり、警察に誘導された」とし争点となった関係者の証言を、名高裁決定は「変遷を重ねた理由には合理性があり、十分信用できる」とした。
無罪判決の一審と有罪判決の二審とでまったく異なる証言をした男性(48)。事件当夜、前川さんを迎えに行ったり、ともに女性宅に同行したとされ、一審は「(事件当夜に)血の付いた前川さんを見た」「(当夜ではなく)別の日だった」と証言がぶれた。
しかし、二審では「見たのは事件の日だった」と断言。逆転有罪の根拠となった。この男性は「今では見たのは事件とは別の日だと思っており、罪悪感がある。彼は無実だ」と苦しい胸の内を明かした。
一方、事件の日「血を付けた服を着た前川君を見た」と供述した男性は、再審開始取り消しから一夜明け「うそつき、利益のためと言われてきたが正直、うれしく思う。分かってくれる人は分かってくれる」とつぶやいた。
当時、警察の取り調べに対して「協力的ではなかった。警察とよくけんかもした。積極的に言った訳ではない」と誘導されたことをきっぱりと否定。「記憶違いで細かな間違いはあったかもしれないが、あった事実だけを話した。大筋に間違いはない」と強調した。
26年以上、この事件に関わってきた男性。弁護側が主張する「警察の誘導」も「全くない」とし、「証言したことに責任は持っている。言ったことは貫く」と話した。