日本国内居住の全員に個人番号を割り当て、年金などの社会保障、納税実績などの情報を一元的に管理・運用する個人番号利用法案(マイナンバー法案)が国会に提出され4月中にも成立する見込みだ。政府は16年1月の利用開始を目指す。国民の利便性の向上が図られる一方で個人情報の保護と悪用防止が課題だ。
マイナンバー制度は、年金、保険、学校関係などの行政事務で、個人識別番号を含む個人情報の利用を可能にする。共通番号とも呼ばれる。法人にも割り当てられる。情報提供ネットワークシステムを通じて行政機関でやりとりされる。所得の正確な捕捉がしやすくなり、所得制限のある給付の調整が容易になるという。国民情報提供自治体が住民票コードを基にICチップと顔写真付きの「個人番号カード」を交付。年金や健康保険、納税などが共通のカードで済むというメリットが強調されている。
マイナンバー法案は民主党政権が昨年2月に国会に提出したが、実質的な審議が行われないまま、当時の野党の自民、公明両党との税と社会保障一体改革の協議が優先された。消費税増税に伴う低所得者対策として「給付付き税額控除」を実施するために必要とされたが、11月下旬の衆院解散で廃案になった。
一連の3党協議で個人番号制度は必要との認識は共有され、自民党は独自の修正案をまとめるなど実現には前向きだった。安倍晋三内閣は3月に旧法案を修正したマイナンバー法案を閣議決定し国会に提出した。
修正の主な点は、まず基本理念として、社会保障、税制、災害対策の分野のほかの行政分野やそれ以外についても「国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮」することが明記された。民間の分野への利用拡大を視野に入れた条文で、附則で法施行後3年を目途に「利用範囲の拡大、特定個人情報の提供範囲の拡大、情報ネットワークシステムの用途の拡大」を検討するとしている。番号制度の利用拡大の在り方については今後も議論が続きそうだ。
また、個人カードの交付にあたり、自治体は全員に個人番号などを記載した「通知カード」を送付することとし、交付業務の円滑化を図った。個人情報の保護と悪用防止のための第三者委員会は「特定個人情報保護委員会」とし附則で「法施行後1年をめどに権限の拡大について検討する」ことを記した。
政府は13年度予算案に、情報提供ネットワークシステム、国民がパソコンから情報の記録を確認できる「マイポータル」、個人カードの交付などの制度導入経費として約350億円を盛り込んだ。これは基幹的なシステム構築経費で、これに対応するための自治体のシステム改修や利用拡大に伴う経費増などについては今のところ明確な説明がない。「全体では概ね2000億円から3000億円」ともいわれているが、費用対効果の面で総コストがあいまいとの批判がつきまとっている。
新たに提出された「政府CIО(チーフ・インフォメーション・オフィサー)法案」では、内閣官房に「内閣情報通信政策官」を置く。政府のIT戦略を推進するために府省横断的な計画を立案し評価する実務者のトップだ。事務次官級よりハイクラスの特別職国家公務員だ。
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