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【第180回】 2012年5月28日
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週刊ダイヤモンド編集部

放射能被害の陰で深刻化する
被災地のアスベスト飛散問題

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 外山氏の試算によれば、昼間だけ(1日8時間)1ヵ月間、暴露したとすると、100万人に25人が中皮腫を発症するとの結果だった。現場では半月以上にわたって高濃度だった可能性があるため、少なくとも100万人に12.5人の発症リスクとなる。

 もともと中皮腫は100万人に1人発症するかどうかの珍しい病気。つまり、この現場の暴露だけで中皮腫の発症リスクが12.5倍に増える可能性があるのだ。

 工事を担当した東洋環境開発(仙台市)は「市に説明した。市に聞いてくれ」と言うばかりだが、難しい工事のため起こったやむを得ない事故などでは決してない。

 市は、「問題だったのは(アスベストが飛散しないよう)密閉養生している以外の場所で、9階から1階まで床に穴を開けて、そこから廃棄物を落としていたこと。床の穴は鉄骨に沿って開けられており、廃棄物が鉄骨に吹き付けられたアスベストに触れて飛散した」と説明する。

 アスベスト除去の専門業者はこう解説する。

 「アスベストを吹き付けた鉄骨があるところに物を投げ落としたら、飛散するなんて当たり前。飛散を承知でやった手抜き工事としか思えません」

 それほどずさんな工事だった。

 外山氏は、「専門家による委員会を設置し、住民の暴露状況について検証すべき」と訴える。

仙台市が発注した工事でも
12日間にわたり飛散し放題

 震災がれきを広域処理するとの政府方針によって、被災地の放射能の問題ばかりが注目されている。だが、実はこうした被災建物の解体工事に伴うアスベスト問題が深刻な状況に陥っている。

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