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【第180回】 2012年5月28日
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週刊ダイヤモンド編集部

放射能被害の陰で深刻化する
被災地のアスベスト飛散問題

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アスベスト対策なしの違法解体だった印刷工場は、仙台市の発注工事だった。1階と2~3階の鉄骨の吹き付け材の種類が違っていることが遠くからでもわかる

 やはり震災で被災した協同組合仙台軽印刷センターの解体工事で起きたアスベスト飛散事故は、「ある意味もっと深刻」と前出の除去業者は言う。仙台市が発注した工事だったからだ。

 1月25日、仙台市内のがれき置き場で測定をしていた環境省の委託業者から、「鉄骨に吹き付けがある」と連絡が入ったのが発端。翌日にはアスベストと判明し、出所を調べたところ印刷センターだった。工事を停止させた時点で、建物の半分以上が解体済みだった。

 あらためて市環境対策課が調べたところ、3階建ての建物のうち、1階部分にはアスベストが含有していなかったが、2~3階の吹き付けには茶石綿が使用されていた。

 分析業者や除去業者の間では、階層ごとに吹き付け材が違うことなど基本の“キ”で、「各階の調査をすることは常識」だ。

 ところが、発注者である震災復興対策室は「階ごとに吹き付けが異なる場合があることを知らなかった」と明かす。そのため、「事前調査はしたが、1階の吹き付けの分析だけでアスベストなしと判断」(環境対策課)、分析業者にも階ごとの調査を求めていなかった。

 その結果、アスベストが飛散し放題の状態が12日間続いたのだ。

 予算規模も人員の充実度も突出している東北最大の都市、仙台市ですらこんなありさまなのだから、「被災地の他の地域では、吹き付けアスベストでさえきちんと除去されないケースが無数にあるはず」と前出の除去業者は指摘する。

 にもかかわらず、「監視する行政には、解体工事すべてを見るような人員はない」(関係者)ような状況で、違法な工事が野放しということも少なくない。

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