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【第180回】 2012年5月28日
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週刊ダイヤモンド編集部

放射能被害の陰で深刻化する
被災地のアスベスト飛散問題

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集積場に放置されていたアスベストが吹き付けられた鉄骨

 「特にひどいのはスレートなど(労働安全衛生法の石綿則で)レベル3の石綿含有成形板の扱いです。破砕しないよう手ばらしすることが決まっていますが、現実には守られていないことが多い。解体では手ばらししても、自治体の仮置き場で袋に入れて持ってくるよう言われ、わざわざ後で(袋に入るよう)破砕してしまうこともある」(外山氏)

環境省なども問題を放置
「すでに手遅れ」の声も

 石綿含有成形板の扱いの悪さについては、環境省と厚生労働省の合同パトロールでも一部確認されており、パトロール後に被災県の担当者が「レベル3建材の解体状況があまりにもひどい。現実にどこまで、どう対応すべきヵ国で明確にしてほしい」と要望した。

 ところが、両省とも形式的な回答しかせず、その直後に開催された被災地のアスベスト対策を検討する両省の合同会議では、そうした要望があったという報告すらされなかった。

 県の担当者はこう明かす。

 「はっきり言って今回被災地のアスベスト対策は完全に失敗しました。すでに手遅れの状況ですが、これから先の災害に備えるためにはいまから対応を始めなくてはまた同じことが起こります。そういう気持ちで言ったのですが、検討もされず残念です」

 現在、環境省はアスベストの飛散防止を義務づけた大気汚染防止法の改正に向けた専門部会を設置する方針。ところが、NPO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」事務局長の永倉冬史氏は、検討前の現時点ですでに批判の声を上げている。

 「今回検討する法改正は、すでに実施されているアスベスト測定の義務化や性能に問題のある測定器の導入など、本質からはずれていたり、利権づくりとしか思えないものばかり。本当に必要なのは監視強化と厳罰化、きちんとした業者を育成・認定する制度です」

 もはや国は、被災地を見捨てたのではないか。被災県の切実な声を無視して、本質からはずれた法改正に狂奔する姿からはそうとしか思えない。

(ジャーナリスト・井部正之)

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