【コラム】韓国はなぜこんな扱いを受けるのか

 現在の韓半島(朝鮮半島)の安全保障危機で、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に罪はない。朴大統領は今回の事態のきっかけとなるようないかなる原因も提供してはいない。北朝鮮問題に関し、称賛であれ批判であれ、何らかの評価を受けるだけのことをする時間と機会が与えられなかったからだ。北朝鮮が長距離ロケットを打ち上げたのは、大統領選の1週間前の昨年12月12日であり、3回目の核実験は朴大統領就任の約2週間前の今年2月12日だった。

 北朝鮮が核実験を実施したとの情報に対し、朴大統領の最初の反応は「手のひらも合わせなければ音が出ない」というものだった。無念や思い通りにならない心情を吐露したものだ。朴大統領は就任後もできるだけ北朝鮮を刺激することを避けてきた。少なくとも北朝鮮に韓国を挑発するいかなる口実も与えはしなかった。

 4カ月にわたり続く北朝鮮の挑発は、昨年12月の長距離ロケット発射で始まった。なぜ昨年12月だったのか。今になって当時を振り返ると、昨年4月、8月にホワイトハウスや国家情報局など米政府関係者が極秘訪朝したことに疑問が生じる。特に8月の訪朝はオバマ大統領が再選に挑んだ11月の大統領選を3カ月後に控えたタイミングだった。オバマ大統領は北朝鮮が再び長距離ロケットを打ち上げ、万が一にも米国を脅かす可能性があるミサイルの射程距離をアピールする状況を避けたかったはずだ。この訪朝以降、米大統領選まで北朝鮮のよる挑発は沈静化した。

 米大統領選前後に発表された北朝鮮外務省、国防委員会の声明・論評は「非公式会談でホワイトハウスの官僚が行った約束を守れ」という言葉に要約可能だ。米国の官僚がどんなに慌てていたとしても、対北朝鮮政策の根幹を揺るがすような約束をした可能性は低い。しかし、北朝鮮に何らかの口実を与えた可能性はある。北朝鮮はオバマ大統領が再選を果たしてから1カ月後に長距離弾道ミサイル(ICBM)クラスの長距離ロケットを打ち上げ、今年2月には過去2回より規模が大きい3回目の核実験に踏み切った。米国との関係で何かがこじれ、一種の武力誇示と攻撃的な求愛に乗り出したと言える。

 米国と北朝鮮の間で生じた対立の構図で、韓国は立つ瀬がない。北朝鮮による連日の戦争脅迫を見るにつけ、自分たちの相手は米国であって、韓国はご主人様の米国に追従し、付和雷同する端役の俳優にすぎない。

 韓国はそんな扱いを受けても、北朝鮮を刺激しまいと必死だ。しかし、国際社会で韓国の努力は正当な評価を受けられずにいる。欧米メディアは最近、泰然とした韓国の姿を興味深い見世物かのように報じている。大抵は専門知識がないまま、現場に投入された「落下傘記者」がそんな記事を書いている。最近米国の大企業の会長が韓国工場の撤収計画を示唆し、至る所で北朝鮮リスクがささやかれ始めた。それによって、韓国経済や株式市場も動揺している。一方、北朝鮮はさらに勢いを増し、米国経済は好調を見せている。対北朝鮮強硬論では自他ともに認める存在の日本も順調だ。

 さらにあきれるのは、国際社会が往々にして韓国を北朝鮮と並ぶ「リスク要因」として、同列に位置づけていることだ。中国は頻繁に韓国と北朝鮮の双方に「状況を悪化させる行動を自制しろ」と求めている。欧州各国が「仲裁役」になると言えば、北朝鮮と手を結んで核・ミサイル開発を行ってきたイランまでもが「関係国の自制」を求め始めた。こうして誰が加害者で誰が被害者なのかさえあいまいになった。ホワイトハウスや米国国務省は最近、記者団に対し、B2など戦略爆撃機が韓半島に出動したのは、韓国が同時の行動に出る必要がないことを明確にするための計画的措置だと説明した。北朝鮮の挑発やさまざまな脅迫に耐えている韓国が黙って平手打ちを食らっているような状況だ。しかし、韓国政府から現状を深刻に受け止めているという声は聞かれない。

 米国はそろそろ出口を探っている。北朝鮮の29歳の権力者、金正恩(キム・ジョンウン)氏は、オバマ大統領から電話1本でもあれば高笑いするかもしれない。過去20年を見ると、北朝鮮発の危機はそうしたコメディーのような結末で幕を下ろした。そうなると、韓国が受けた精神的、経済的被害はどこに愚痴をこぼすこともできない。韓国が北朝鮮のような無謀な行動に出ることはないとしても、静かにしているからといって、それなりの扱いを受けられるわけでもない。北朝鮮が引き起こした安全保障危機が「韓国が言いくるめられる場」と化す悪循環を断たなければならない。そうした構造が続く限り、韓国は一流国にはなれない。

朴斗植(パク・トゥシク)論説委員
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