迷子にならないように馬車道に沿ってずんずん進む。
途中魔獣が出れば戦う。
何度か戦ってみて気付いたことがいくつか。
まず、イメージ次第で同じ呪文でも効果とMP消費が違うこと。
例えば『メラ』。
呪文を唱える時に火の球をイメージするんだけど、「これくらいのサイズの火の玉を何発当てる」と明確に考えることで、威力やMP消費量が変わるのだ。「ゴルフボールサイズ1つ」とか「サッカーボールサイズ5つ」とか。
というよりは『こんな感じの攻撃魔法』をイメージしてその発現のためのトリガーとしてなにか呪文を言う、という感じかな。
呪文ありき、じゃなくて、まずイメージありき。
呪文はイメージが崩れないものなら結局のところなんて言ってもいいみたいだった。
犬モドキな魔獣が3匹いっぺんに出てきたときに、すんごい唸り声で牙剥きだしてバラバラに走りまわるもんだから、怖いし、標的が定まらないから攻撃魔法が撃てないしで。
とりあえず眠らせようと思ったんだけど焦りまくってるもんだから『さっさと眠れってばコンチクショウ』とかイメージしながら咄嗟に出た呪文は『ホイミ!』。
いやいや敵に回復魔法かけてどうすんだよ、ラリホーだよって自分につっこんだけど、3匹ともゴロンって寝ちゃった時には乾いた笑いが出たよ。
だから魔法ってのは何事も思い込みの激しさが勝つみたい。
今までのオタク生活と、この厨二気質を心から感謝するね、まったく。
RPGやアニメのお蔭。呪文いろいろ知っていてよかった。
あと、これもゲームのお蔭なんだけど、ゲームではバトル中に敵にどれだけ激しい炎をぶつけても、メテオみたいに隕石ふらせても、召喚したタイタンが地面を割って出てきても、リバイアサンが水浸しにしても、バトル終了後フィールドが壊れていたりしないでしょ。
私の中にそのイメージが明確にあるから、激しい炎をだしても周りの木に燃えひろがったりしないのだ。
周りを焦がしたのは一番最初にメラ失敗して火炎放射だしたときだけ。
あの時は攻撃目標がなかったから周りを焼いちゃったんだとおもう。
なんてご都合主義。だって魔法ってそういうものって私がすんごく思い込んでいるから。
何度も言うけど、思い込みの激しさが勝つんだよ。
魔法はファジーだ。
ビバ私のオタク心。妄想歴ながくてほんとによかった。
それから、もうひとつ気付いたこと。
イメージがはっきりしていると呪文が成功しやすくって、イメージがちゃんと出来ていないと失敗するってこと。
攻撃をくらった魔獣は怒りと死の恐怖でたいてい攻撃が激しくなるから、2発目の呪文は私が逃げながらだったりであたふた焦っているからしっかりイメージ出来なくって不発になることが多いのだ。
ステイタスを見て自分よりずっとHPの低い魔獣だと判っていても、命をかけてこちらに向かってくる牙は本気で怖い。
だから出来るだけしっかり効果をイメージして一発で仕留める。
先制攻撃、一撃必殺。
へたれ都会っ子にはこれしか生きる道がないのだよ。
先制攻撃、一撃必殺。
このためにめちゃくちゃ役にたったのが魔法じゃなくてスキルだった。
私が覚えたスキルは『索敵』と『隠密』。
スキルの『索敵』はわりとすぐに取得できた。
カサッという物音にびっくりして立ち止り、周りに耳を澄ませてみたときに ピン! と音が鳴り、
―スキル『索敵』を取得しました―
と文字が浮かんだのだ。
『索敵』を使うと敵が現れたらアラームがなり、周りにいる敵がマーカーで表示される。
マーカーの部分をじっと見ると相手のステイタスが出てくるのだ。
戦闘モードに入るとマーカーの色が黄色から赤に変わる。
黄色マーカーが非戦闘態勢の敵。赤マーカーが戦闘態勢の敵ってわけ。
最初は半径1m程の狭い範囲しか判らなかったけど、使っていくうちに少しずつ索敵範囲が広がって夕方には10mくらいまでレベルアップした。
『隠密』の取得も簡単だった。
ちょっと休憩したくて、腰の高さくらいの岩の上によじ登って休んでいるときに、向こうから太い蛇がにょろにょろ近づいてきたのだ。
うっわ気持ちわるって思って息をひそめてじっとやり過ごしたことで取得できた。
『隠密』を使うと気配だけじゃなくて体温や匂いなんかも隠すことが出来るみたいだ。
さすがに物音は消せないので足音たてちゃだめだけどね。
『索敵』と『隠密』を常にかけておくことで、敵に先に見つかる頻度が下がったのだ。
こちらが先に見つけると遠くから魔法で攻撃を仕掛けられる。
やり過ごせそうならそのまま逃げて、戦闘になりそうな場合でもあらかじめ攻撃呪文をスタンバイしておいて赤マーカーになったとたんに呪文で一撃。
ということで、豆腐メンタルな精神力はガンガン削られつつも、さほど命の危険に陥ることもなく無事に森の奥へと進めたのでした。
3/9 「サーチ」を「索敵」に統一しました。
3/14 文言修正しました。
7/16 書式修正。文章若干修正。
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