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問われる日本人の姿勢
「ご覧になって、欠点があればぜひ知らせて下さい」。
韓国の大ヒット映画『シュリ』のカン・ジェギュ監督の言葉だ。日本での上映にあわせて来日した監督が、封切り日の舞台挨拶で観客にこう呼びかけた。若き巨匠の意外な発言に面食らってしまった。
カン監督は、今後も日本をはじめ海外での上映を前提として作品制作に取り組むという。それに向け、日本の観客が『シュリ』をどう観たのか、素直に受け止めようとしているのだ。映画ビジネス展開のためとはいえ、日本人の感性を尊重しようという考えがそこにある。
この映画の中で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のスパイ将校役を演じて数々の賞を総ナメにした俳優のチェ・ミンシクさんも私のインタビューで、「悪かった点をインターネットなどで教えて欲しい。次作に役立てたい」と語っていた。
さらに、韓国政府閣僚。昨秋東京で開かれた韓国投資説明会で、チョン・ドック産業資源部長官(当時)は日本の企業関係者を前に、「私どもにも至らぬ点があります。でも努力して解決します」と述べた。低姿勢に徹してあえてそう言ったというより、自然にさらりと出た言葉だった。
挨拶を終えて会場の外に出たチョン長官に、待ち構えていた知人らしい韓国人男性が「韓国に至らぬ点があるなどと言う必要がどこにある」とくってかかっていた。
確かにこれまで、政府閣僚が日本人を前に公の席でそういう言い方はあまりしなかったかもしれない。
最近、来日した韓国の人達からこうした気負いのない率直な発言を耳にすることが重なった。
決して偶然ではないと思う。日韓の交流が一段と深まるいま、韓国の人達は日本人にこれまでになく進んで胸襟を開こうとしているのではないか。
では、それをどう受け止め、どう応えるのか。韓国の人の心に向き合う日本人の姿勢が試されているような気がする。
(2000.02.16 民団新聞)
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