東電に廃炉を任せていたら いつか北半球は死の灰で壊滅

大追跡 - 日刊ゲンダイ

<「タコ足配線」が原因とはシャレにならない>

 背筋が凍りついた人も多かっただろう。東京電力福島第1原発で停電が発生し、1、3、4号機の使用済み燃料プールの冷却設備などが約30時間にわたって停止した事故のことだ。

 事故原因は3、4号機の仮設配電盤の不具合とみられ、配電盤の端子と壁に焦げ跡が見つかった。東電は20日朝から、25人態勢で本格的な調査に乗り出したが、相変わらず後手後手のデタラメ対応である。

 何と言っても、冷却機能が失われた1、3、4号機の燃料プールには、使用済み燃料が2100本余り、共用プールにも6300本余りがそれぞれ保管されている。もし停電があと3日も続き、冷却する他の手立ても全て失っていれば、プールの水は蒸発。冷却不能で9000本近い燃料がメルトダウンしていた。高線量の放射性物質が再びダダ漏れとなり、最悪の場合、日本はもちろん、北半球に“死の灰”が降り注ぎ、「壊滅」状態に陥っていたかもしれないのだ。

 それなのに、二重三重の安全対策を施すべき燃料プールを冷やす電源がなぜ「仮設」だったのか。事故直後ならともかく、2年経ってもホッタラカシだったとは呆れるばかりだ。

「東電によると、福島原発では現在、津波対策工事が行われていて、ふだんは別々の送電網2系統が連結されていた。つまり、過剰電流で仮設配電盤がショートしたなら、『タコ足配線が事故原因』のようなもの。東電は日ごろ、一般家庭に『タコ足配線は火事の原因になる』と注意を呼びかけているクセに、何をやっているのか」(経済誌記者)

 仮設配電盤の近くには、ネズミのような死骸も見つかっていて、小動物が接触した可能性もある。しかし、原発は朽ちかけた古民家とは違うのだ。こんなズサンな管理で、今後40年ともいわれる長い廃炉作業に耐えられるのか。原子炉格納容器の設計に携わっていた元東芝技術者の後藤政志氏はこう指摘する。

「重要なポイントは、復旧までに約30時間も費やしたことです。これはバックアップの態勢が整っていなかったということ。原発の冷却機能は本来、瞬時に回復するべきもので、遅くとも2、3時間以内に復旧しなければなりません。汚染水の処理タンクや配管にも仮設が目立ちますが、廃炉作業は40年も続くのに、いつまで『仮設』のままにしておくのか。東電の対応は、アクシデントをまったく想定していなかったとしか思えません。今後の作業にも非常に不安を覚えます」

 東電の体質は事故当時とナ~ンも変わっていない。事故が起きれば、「想定外」と以前に聞いたような言い訳を繰り返すだけだ。次の過酷事故が起きるのも時間の問題だ。

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