2011-01-23 15:58:28

武田薬品工業さんが、なぜ新卒全員に、なぜTOEIC700点を義務づけたか

テーマ:語学
武田薬品工業さんが、新卒全員にTOEIC700点を義務付けたというニュースがあります。

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製薬国内最大手の武田薬品工業が、2013年4月入社の新卒採用から、英語力を測る学力テスト「TOEIC」(990点満点)で730点以上の取得を義務づけることが22日、明らかになった。
 通訳業務や海外赴任を前提とする採用を除いて、国内大手企業が新卒採用でTOEICの基準点を設けるのは極めて珍しく、他の大手企業の採用活動にも影響を与えそうだ。

(略)
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2011年1月23日03時05分 読売新聞
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詳しく内情は知らないですし、
そもそも、こういうのはガセネタだったというのが往々にしてあります。

ですが、武田薬品さんに限らず、
 「新卒全員にTOEIC700点義務」 という会社は今後増えてくるものと思います。

それはなぜかを推察しました。



なぜTOEIC700点か。

結論から言うと、ほとんどの業務において、TOEIC700点では英語力として不十分です。
でも、700点というのは妥当な数字です。

なぜかというと、

・700点越え位から、英語を使うメリットが英語を使う苦労よりも大きくなってくる
・だから、700点超えている人に英語業務をやってもらうと、英語使う→英語伸びる→英語もっと使う、という好循環が期待できる
・一方、700点切っている人だと、英語から逃げる→伸びない→英語から逃げ続ける という悪循環なる

もちろん個人差はあるので、かなりざっくり一般化した感じですが、
だいたいは700~800点くらいが目安 かなと思います。



なぜTOEICで測るのか

TOEICは、リーディングとリスニングしか測れません。
一方仕事では、ライティングもスピーキングも大事です。

また、TOEICは、次のどちらの場合でも、英語力を適切に測ることはできません。
・英語を習い始めたばかりの人には難しすぎ (TOEIC400点以下)
・英語がかなりうまい人には簡単すぎ (TOEIC900点以上)

ではなぜTOEICが使われるかというと、メリットが5つあるからです。
1. コストが安くすむ
2. 多くの社員に一度に実施できる
3. 人事部にとっての手間が少ない
4. 評価の客観性が担保しやすい
5. 測りたい英語力の難易度との妥当性が高い

1~3についてですが、人事部の仕事というのは想像以上にたいへんです。
大企業になってくると、万単位の社員に対して共通のモノサシで能力を測る必要があります。
しかも、少ないマンパワーで低コストでやらなければなりません。

4についてですが、何かを測るというのは想像以上にたいへんです。
よくできたテストでないと、英語力が伸びたのに「下がった」という評価が下されてしまいます。

その意味で、TOEICは英語面接などに比べて、評価の客観性が担保しやすいです。
10人にテストをする場合は一人の面接官で測れますが、
1000人にテストをする場合、数十人の面接官が必要です。
数十人の間で評価基準を統一するのは至難の業です。
いっぽう、TOEICはペーパーテストですし、
問題ごとに統計的な難易度がはっきりしているので、
評価の客観性がより高いです。

日本人は英語を3000時間勉強する必要 がありますが、
理論上、TOEICは英語学習時間100時間ごとならばその伸びを測れます。
日本のビジネスパーソンの多くが収まるTOEIC400~900点の間でいうと、
これができるテストは、TOEICを除くとなかなかありません。

もちろん、TOEICには欠点がたくさんあります。
チャーチルはこう言いました。
「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けば」
同じようなことがTOEICでも言えると思います。
「TOEICは日本の大企業にとって最悪のテストといえる。TOEIC以外の全てのテストを除けば」



なぜ新卒全員なのか

現在、社内の一部の人しか英語に触れる必要がない会社でも、
社員全員に英語をやってもらった方がよいです。

というのも、
社員全員が英語ができるわけではないということが、
日本企業の世界市場での競争力向上を妨げている からです。

なお、経験則では、
社内の一部の人しか業務で英語を使わない会社が、
昇進基準に何らかのテストの点数を設けずに、
「英語を勉強しろ」 という意識付けを行った場合、
ほとんどのケースにおいて失敗します。

組織を運営するうえでは、
「なぜやらなければならないのか」
「まず目指すべき最小のゴールはどこか」
これらをはっきりさせることは大事だと考えます。



なぜ社員全員ではなくて、新卒全員なのか

これはわかりません。

ただ、おそらく社内の英語アレルギーに配慮したのだと思います。
大企業の強みは一気呵成にがらっと変えることではなく、
様々な人・点に配慮しながら、既存の強みを維持したまま物事を変化させていくことです。

その意味では、新卒はもっとも手を付けやすい分野です。
そして、新卒にTOEICの点数を課して数年たつと、
社内のある程度の人数が英語慣れしたます。
そのころなら、既存社員全員にTOEICの点数を課しても、反発がすくないです。

ただ、イチ零細企業経営者としては、新卒と同時に経営陣にもTOEICを課すべきではと思います。
英語能力向上で一番大事なのはモチベーション。
社員のやる気をどう高めるかを考えると、
企業のトップが必死になっている後姿を見せない限り、
社員も必死になるとは思えません。

その意味では、楽天・三木谷さんの 「英語ができない役員はクビ 」 発言は、
社内向けには説得力が高いです。




以上、長文すみません。

英語の勉強はたいへんですが、英語がいったんできるようになると、未来が大きく広がります。
「日本に最も欠けているのは希望だ」 というのは村上龍さんの言葉です。
おとなり韓国は、世界進出が非常にうまくいっているように見えます。
英語を学習することによって、日本人のプレゼンスも世界で拡大できればいいなと思います。
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コメント

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1 ■無題

入社しても、結局、医者の奴隷に過ぎないのに哀れだね。

2 ■無題

> 「日本に最も欠けているのは希望だ」 というのは村上龍さんの言葉です。
> おとなり韓国は、世界進出が非常にうまくいっているように見えます。
> 英語を学習することによって、日本人のプレゼンスも世界で拡大できればいいなと思います。


英語の勉強が苦痛でしかないには人には、絶望を加速させることでしかないですが。
脳の構造上、どうしても外国語を覚えられない人間というのが存在します。そういう人間はシネと?

3 ■Re:無題

>ATMさん
脳の構造上外国語を覚えられない人間が存在するなんて聞いたことないぞ。あなたは日本語を言葉として認識して読書きできるのに、英語だとそれを言葉として認識できず読書き出来ないというのはどういう理屈だろう?双方とも言語という意味では全く同じものなのだから、どちらかが読書き出来る人間ならばもう一方も努力次第で習得可能であろう。
英語の勉強が苦痛ならば、英語を必要せずに生活出来る方法や仕事を探せば良い。日本語しか読書きできないならそれはそれで問題ないのではないか。好き嫌いがある万人がバイリンガルになることはまず無理だろうから。そして無理だと思ったら諦める。別の道なんていくらでもある。

4 ■無題

こういう会社があってもいい。英語が苦手で勉強する気もない人は、他の会社をあたればいいだけ。英語が得意な人より選択肢が狭まるのは仕方ないこと。

5 ■Re:無題

>Aさん

製薬会社が医者の奴隷なら、医者は患者の奴隷です。
重要なのは、自分の役割を認識し、そこでベストをつくすことです。
これが出来ている人を僕は尊敬します。

>ATMさん

英語ができなくても構わない、素晴らしい職業はいっぱいありますよ!
そして素晴らしい製薬会社は武田さんだけではありません。
(そもそも、このニュースは依然としてガセネタの可能性があることをお忘れなく!)


>通りすがりさん
>zzzさん

ありがとうございます!

6 ■無題

むしろ医者が製薬会社の奴隷じゃ。だって患者に薬売らなきゃいけないでしょ。そして、今回無料で日本中に広告出せて万々歳。ちなみに私は恋の奴隷

7 ■無題

こんにちは。
確かにTOEIC700点って絶妙な数字ですね。
もっと高い数値を求める企業もありますが、これから変わろうとしている日本の大企業にとっては妥当な数字なのかな、と思います、

8 ■英語ができても幸せになれないケース

ヘタに英語ができると見なされると、総務も人事も経理も会計も法務も契約も、英語で書かれたものは全て回ってきます。しかも全部日本語に逐語訳しないと、上層部が意思決定しません。その意思決定が日本語でなされ、それを現地で再度翻訳。しかも、翻訳に適していないあいまいな表現満載の日本語。

法律や規制が絡む通訳は、より高いレベルの英語や業務知識が求めらます。また、「英語だから」を理由に、意思決定するべき地位の人間が、その責任から逃れようとします。
組織内で英語を使う人間が少数だと、その少数の人間に権限や立場を完全に超越したアホみたいな負荷が回ってきます。

結果、英語のできる人は、英語が仕事上の言語の一つとして認められている環境へと逃げます。
放っておくと、英語ができる人は、ある特定の場所に偏って存在するようになるのでしょうね。

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