自称「愛国者」、対馬仏像窃盗犯の正体は

■高齢に過労…主犯、下見中に倒れる

 窃盗団4人は、昨年8月と9月の2度にわたり、対馬の寺や神社を下見した。下見を2回行った理由は、1回目の下見中、最高齢のキム容疑者が酷暑に耐え切れず倒れてしまい、対馬の病院に10日余り入院したからだ。キム容疑者は、高脂血症・高血圧・狭心症などの持病を抱えていた。

 4人が「仕事」のため対馬に入ったのは昨年10月初め。それから6日間、対馬を縦断しながら寺や神社3カ所を荒らし、仏像2体を盗んだ。最高齢のキム容疑者が見張り役を務め、残る3人が現場に潜入し仏像を盗んだ。

 4人は盗んだ仏像を、対馬に来ていた「故買屋」のチャン容疑者に渡した。チャン容疑者は船で対馬から福岡に向かい、仏像をソン容疑者に渡した。ソン容疑者は警察の取り調べに対し「福岡港にはX線検査がないので、福岡から釜山に搬入するのは容易だった」と供述した。

 ソン容疑者は、釜山港で「安物の模造品」だと言いつくろった。当直の文化財鑑定官も「模造品」と判定した。国宝級の仏像は、こうして韓国に持ち込まれた。しかし、密輸という形を取らず堂々と通関したことが、後に犯行が明るみに出る決定的な手掛かりになった。日本政府の通報を受けて行方を追っていた警察が、形の似ている2体の仏像が釜山港経由で搬入されたという記録を確認したのだ。警察はソン容疑者を捕まえ、その後チャン容疑者、窃盗団の順で次々と摘発した。慶尚南道昌原にあるチャン容疑者所有の倉庫で仏像が発見されたのは、今年1月17日。その後は、現在に至るまで韓国文化財庁が保管している。

■摘発後に生じた兄弟間の亀裂

 ソン容疑者、チャン容疑者に続いて警察に捕まった最高齢のキム容疑者は、潔白を主張した。「仏像を持ってきただけで、盗んではいない」というのだ。窃盗の現場に行っていないキム容疑者は「宿にいて、現場から1キロ離れた場所で風に当たっていた」と主張した。

 対馬に行ったことについても「日本の民芸品を安く買うため、弟の一行に同行しただけ」と主張した。つまり、弟がやった、というわけだ。しかし、後に捕まった弟は「3人が盗みを行う間、兄が見張りをして現場を指揮した」と供述した。これに対し兄のキム容疑者は「実の弟が、なぜ自分をどんどん陥れようとしているのか分からない。残念だ」と警察に語った。

 お互い、主犯の汚名を相手に着せようとする兄弟の争いは激しい。2人は裁判所が選任した無料の国選弁護人を断り、それぞれ私選の弁護人を選任することにしたという。

 キム容疑者兄弟には、捜査中に1人の面会人も訪れなかったという。私食はおろか身に着ける下着すらなく、「故買屋」のチャン容疑者に頼んで服を何着かもらったとのことだ。

 捜査チームの関係者は「窃盗犯が“愛国”を口にするのは、はっきり言って詭弁(きべん)」と語った。「盗んだこと自体が過ちだが盗んだ後に愛国心に目覚めたというのなら、博物館や文化財庁に仏像をさっさと持っていくべきなのに、なぜ倉庫に隠していたのか」というわけだ。実際、故買屋のチャン容疑者は捕まる前、複数の転売ルートを調べていた。

李吉星(イ・ギルソン)記者
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