【ＢＯＸ】ロンドン銅の清水、メダルが消えた！「ごはんがのどを通らない」

ロンドン五輪ボクシング男子バンタム級で銅メダルを獲得し喜ぶ清水

　ロンドン五輪ボクシング男子バンタム級で銅メダルを獲得した清水聡（２７）＝自衛隊＝が都内でのイベント出演中にメダルを盗難された可能性があるとして警視庁に被害届を出していたことが８日、分かった。五輪ボクシング競技で４４年ぶりのメダルとなった殊勲の証し。清水は「ごはんがのどを通らない」と語るほどに大きなショックを受けている。

　ない。メダルがない。メダリストと称される選手にとっては、文字通り自らの価値を証明する宝物が突然、手元から消えてしまった。清水は、周囲に「ごはんがのどを通らない」と胸中を明かしている。

　警視庁原宿署などによると、清水は３月２４日、東京都渋谷区の東京体育館を訪問し、体育館のリニューアルを記念したイベント「東京スポーツドリーム２０１３」に参加。メダルを持参したつもりだったが、２８日になって当日のバッグの中から消えていることに自宅で気付いた。翌２９日に体育館側に「メダルを置き忘れたような気がするんですが…」と相談。一緒に現場を探したものの発見されなかったため、今月２日に遺失届を、４日には盗難の被害届を警視庁に提出。メダル以外のものは財布等を含め何もなくなっていなかった。

　東京体育館を管理運営する東京都スポーツ文化事業団によると、清水はロンドン五輪卓球女子団体銀メダリストの平野早矢香、同バレーボール女子を銅メダルに導いた真鍋政義監督らとともにイベントに参加。トークショーへの出演など約５時間にわたって現場に同席した。途中、平野はサプライズで銀メダルを披露する場面があったが、清水ら他のメダリストはメダルを参加者の前に披露する機会はなかった。

　メダルを入れたと思われるボストン型の黒いスポーツバッグを置いていたのは「メーンアリーナ」２階にある控室。清水だけが利用した部屋で、バッグはテーブル奥の床に置いていた。部屋のドアと、付近一帯の廊下の扉は施錠されていなかったが、扉の前には警備員や係員が常駐しており、スタッフ用のパスを提示しないと通過できない状況だった。イベントには計約１万１０００人が参加し、全体で約１００人の警備担当者が配置された。「メーンアリーナ」に２０００～３０００人が集まる時間帯もあったが、不審者などの報告はなかった。

　実は過去にも、メダル盗難に遭いかけた。昨年９月、東京・六本木でカバンから財布をすられた。その時は幸い、一緒に持っていたメダルは無事だったが、今度はアウト。所属する自衛隊の関係者は「せっかく取ったメダルなので、本人の元に戻ってきてほしいです」と話していた。

　◆清水　聡（しみず・さとし）１９８６年３月１３日、岡山・総社市生まれ。２７歳。関西高、駒大を経て自衛隊体育学校所属。大学４年時の２００８年北京五輪ではフェザー級で初戦敗退。昨年８月のロンドン五輪ではバンタム級で銅メダルを獲得。１９６８年メキシコ五輪バンタム級の森岡栄治さん（故人）以来、４４年ぶりの同競技でのメダルだった。身長１７９センチの左ボクサー。