【ＢＯＸ】山中「神の左」でＶ３！無敵３連続ＴＫＯ

３度目の防衛に成功し、血で染まったグラブで長男・豪祐君を抱く山中

　◆報知新聞社後援　ワールドプレミアムボクシング　トリプル世界タイトルマッチ　▽ＷＢＣ世界バンタム級戦　○山中慎介（ＴＫＯ　１２回１分５７秒）マルコム・ツニャカオ●（８日、東京・両国国技館）　これが「神の左」だ！　ＷＢＣ世界バンタム級王者・山中慎介（３０）＝帝拳＝が、元世界王者で同級１位の指名挑戦者マルコム・ツニャカオ（３５）＝真正、フィリピン＝を“強すぎる左”で計３度のダウンを奪い１２回１分５７秒ＴＫＯ勝ち。３度目の防衛に成功した。昨年１０月に誕生した長男・豪祐（ごうすけ）君をリング上で抱き上げ、ベルト死守の感激に浸った。山中の戦績は１８勝（１３ＫＯ）２分け、ツニャカオは３２勝（２０ＫＯ）３敗３分け。

６回、ツニャカオに左ストレートをヒットさせる山中（左）

　これが山中の真骨頂だ。最終１２回、挑戦者のガードを力ずくでこじ開けるワンツーからの左ストレートを２発放った。血だるまの元世界王者ツニャカオはコーナーに吹っ飛んで倒れ、レフェリーに抱え込まれた。試合終了残り６３秒。２連続ＫＯ防衛に赤コーナーに駆け上がって右手で左腕の力こぶをトントンと叩き、８５００人の観衆に「神の左」を誇示した。

　「後援会の仲間が名付けました。少し恥ずかしいですわ」というニックネームの通り、強すぎる左は絶好調。３回、ツニャカオと同時にパンチを放つと一瞬先に左ストレートを当てて初ダウンを取った。３回終了間際にも再び左で２度目のダウンを奪った。しかし７回、左拳の人さし指に痛みが走った。トラブルにもめげず、「相手のパンチの力がなくなり、弱っていると感じた。１２回は倒しにいった」と攻めどころを逃さなかった。

山中のトランクス

　リング中央で昨年１０月に誕生した長男の豪祐君を抱き上げた。トランクスのベルトラインには「ｇｏｓｕｋｅ」の名前。泣きわめく我が子を見て「喜んでますね」と至福の時を味わった。指名試合（１位挑戦者との防衛戦）に備え、２月の米ハワイ合宿を経て、過去最高の１４８回のスパーリングをこなした。本田明彦会長（６５）からは連日細かい注文を付けられ、時にはカミナリも落とされた。前回の試合までは頭の中が混乱し、疲労感が増していたが、今回だけは違った。

　実家の沖縄で出産した夫人が昨年１２月に都内の自宅に戻った。おむつを替えたり、風呂にも一緒に入り、“イクメン”ぶりを発揮した。人並み外れた闘争心が必要なボクシングで子供に溺愛（できあい）し、気が緩むのでは…と考えたこともある。だが「今回、練習がすべて順調。練習が充実すれば家庭もうまくいく。人それぞれ」と父になって多くを学んだ。

　観客席では南京都高の後輩でプロ転向の意思を明かしているロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太（２７）が見守った。ＫＯ劇に「村田君、どうでしたかー」と先輩風を吹かせた。「最後まで冷静に戦えたのは収穫。これからは面白い試合をしていきたい」。自慢の左でその名を世界にとどろかせる。

　◆山中の神の左メモ
  ▽１０年６月２０日　日本バンタム級タイトルマッチで７回に左ストレートで安田幹男のダウンを奪った。直後に打ち下ろしの左で安田を腰から崩れさせてレフェリーストップ。初挑戦で日本タイトルを獲得。
  ▽１１年３月５日　日本バンタム級タイトルの初防衛戦で、ランク１位で８戦全勝だった岩佐亮佑を１０回にロープ際に追い込んで一気に７連打。最後は左ストレートが顔面をとらえ、レフェリーストップでＴＫＯ勝ち。
  ▽１２年１１月３日　ＷＢＣ世界バンタム級王座の２度目の防衛戦で、２階級制覇を狙ったトマス・ロハスを迎え撃った。７回にワンツーからの左ストレートでぐらつかせ、最後はロハスの右フックに左クロスのストレートを合わせてＫＯ勝ちした。

　◆山中　慎介（やまなか・しんすけ）１９８２年１０月１１日、滋賀県湖南市生まれ。３０歳。南京都高、専大を経て０６年１月にプロデビュー。１０年６月、日本バンタム級王座を奪取（防衛１回）。昨年１１月のＷＢＣ世界バンタム級王座決定戦でエスキベル（メキシコ）を下し、世界王座獲得に成功。昨年は４月と１１月の防衛戦に勝利。身長１７１センチの左ボクサーファイター。家族は夫人と長男。