そう言えば、領収書、なんて書こう

 

ここで迷った。

 

正確に「家賃を先に払いました」と書くと、

間違いなく、W君の目に触れるわけだ。

 

すると、実は家賃の値下げ交渉が出来ていないことがばれてしまう。

ここまで頑張ってきた不動産業者さん。

立場を悪くするのもなぁ

 

もう一度、業者さんに相談。

ベテラン担当者さんの助言で

「ペット手数料」と書いておいた。

ペット不可のところを飼えるようにしてもらいました、的な。
 

契約成立。
良かった。本当に良かった。

家族も無事、渡米。

 

家族が来たのが10月4日。

家の契約にサインが出来たのは、なんと
10月3日だった。

ほんと、ギリギリだった。

 

これは普通の人には理解できない感覚だろう。

でも、海外駐在を一回でも経験している人なら理解してもらえるかもしれない。

家族が来る1日前まで家のサインが出来ない

どれほど恐ろしいか。
ほんと、恐怖だった。

 

空港で嫁さんと家族たちを迎える。

 

嫁さん、可哀想に

体がずいぶん痩せてしまっていて、ずいぶん苦労かけさせてしまったか。

そらそうだ。子供3人、犬一匹。

女手一つで引っ越し手続きまで全部してくれたんだから。

きっちり、家を確保できてよかった。

本当に心からホッとする。

 

 

数日後、

フジテレビ本社の人事部の労務担当から連絡が入る。

 

「長谷川君、このペットの手数料ってなんだい?」

 

この担当者、とても優しい方だった。

色々な事情から急な渡米となった僕たち一家のことを

とても気にかけてくれていた。

 

僕は事情があって、色々かかったお金だが、

当然お支払いする、と伝える。詳しくは話さなかった。

 

「長谷川君の家には、本当に迷惑をかけたからね。

 急な渡米で、何かとご入用だとは思うし、

 出来るだけ、長谷川家の負担にならないようにしてあげたいな」

 

助かる申し出だった。

正直な話、相当な出費だったし。これからの生活に不安もある。

 

僕は、では、と甘えることにする

「セキュリティーデポジットで申請できますか?」

 

セキュリティーデポジットについて、解説する。

 

日本語では、敷金と訳されがちだが、
日本のいわゆる「敷金」の概念とは
ちょっと違う。

 

基本的には「預けるだけのお金」。

 

テナントが夜逃げなどをしたときの、大家さんの保証となるお金らしい。


…夜逃げ前提の預け金があるとか、さすがアメリカ。

一応、僕の受けた説明では、

日本と違い、アメリカでは、家を借りた際、

住んでいた本人が退去する時に
家の清掃などを行い、

きれいな状態にして大家に返却する。

そのお金は自分持ち。

もちろん、僕が日本に帰国する時も、そうした。

僕の場合は20万ほどかけて、壁をきれいにして返却した。
(あとから聞いた話だと、そうではない不動産もあるらしい)

まとめると、要は「(基本的に)全額返すお金」

 

これで、帰任時に、フジテレビに対し、そのお金を返せばいいし、

当面の不安もかなり解消された。


これでだれも傷つかない…。
良かった。本当によかった

 

もちろん、この労務担当の方とのメールのやり取りも、

全部残っている。

確実に後日、ファイルとしてアップすることを約束する。
残念なのは、最終的に、

「では敷金で登録してください」

と伝えたメールだけ不用意に社内メールで送ってしまった。

こういうメールは個人メールでしておくべきだった。
そのため、残念ながら、今、僕の手元にはないが、

確実にフジテレビ社内には残っていることを報告したい。

フジテレビ人事部がそのメールを持っていることは僕自身で確認している。 

 

 

とにかく、こうして、僕のニューヨーク生活は、

多くの方々の協力を得て、ようやく幕を開けたのだ。