企画特集1【再発見 森の魚たち 山の水族館の挑戦】
(5)寒さをあえて有名に
■まちづくり取り組みたい
【佐藤英法】「おんねゆ温泉 山の水族館」のリニューアルを監修した水族館プロデューサーの中村元(はじめ)さん(56)は、新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)やサンシャイン水族館(東京都豊島区)なども手がけた。ミニ水族館の再生と今後の構想について中村さんに聞いた。
◇
――建築費は約3億5千万円でした
「当初は建築費約2億5千万円だった。約3億円の予算では、水族館建設の経験が豊富な業者も手を出さない。でも、北見市の担当者は『これしかない』と話していた」
――旧山の水族館の入館者は、年間約2万人で推移していた。どこに課題があったのでしょうか
「展示方法が古いタイプで、同じ大きさの、小さい水槽が並んでいた。淡水魚は、どれも同じように見えてしまっていた」
――凍る水槽など、見せ方を工夫されましたね
「冬の営業で呼び物がほしかった。北海道の湖面は凍結するとわかっていたが、流れのある川も凍るとは知らなかった。屋外に水槽を設けてコスト削減にもつながった」
――入館すると「滝つぼ」があります。いきなりの見せ場です
「お客は、お金を払った直後の水槽をじっくりとご覧になる。層雲峡の滝のイメージで、清涼感は抜群です。水族館の飼育員、佐藤圭一さんは、人がくぐるトンネル型水槽をつくりたがっていたが、トンネル型は高くつく。しかし、滝つぼならトンネル型水槽を半分にした構造で、コストも安上がりになった」
――中村さんが北見市に提示したプランでは、初年度は入館者10万〜17万人、5年後に5万人に安定する、とあります。オープン後の入館者は、3月時点で19万人です
「凍る水槽の完全凍結が遅く、12月に氷が覆っていれば、入館者は30万人に到達したと考えている。温根湯温泉の寒さをあえて有名にする水族館にしたかった。生き物だけを展示しているのではなく、温根湯温泉そのものを展示している」
――第2の旭山動物園を目指していますか
「『北の国から』の舞台となった富良野のようにしたい。おんねゆ温泉郷を訪ねれば『よい温泉がある。おいしい農作物がある』と思われる場所にしたい。東京などから観光客を呼ぶためには、行政が空港から無料の送迎バスを運行させるような方法もある。まちづくりにも取り組みたい」
――リピーターを増やす工夫はありますか
「5年間は多分、このままいける。再訪者を増やすには、水族館の周囲に魅力があるか、どうかだ。地元でも育もうとする動きが出てきた。温泉はそうした魅力の一つでしょう」=おわり
(この連載は松島日世士、佐藤英法が担当しました)
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朝日新聞北海道報道センター
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