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創価学会にアタマの上がらない新聞社はここだ!

(週刊文春 2002・9・19号)

「聖教新聞」「公明新聞」印刷会社全リスト入手

━創価学会の機関紙、「聖教新聞」の発行部数は約五百五十万部。しかし、不思議なことに自前の印刷所は持っていない。他社の印刷所に委託しているのだ。聖教新聞の印刷を請け負うことで多額のカネを稼ぐ新聞社に、はたして創価学会を批判することはできるのか?━

「最近、創価学会や池田大作名誉会長に対する新聞の迎合が目に余る。創価学会は与党・公明党と実質的に”政教一致”していて、憲法違反(憲法二十条宗教団体による政治上の権力行使の禁止)の疑いも指摘されている。それなのに、社会のお目付役であるべき新聞が、ジャーナリズムの批判的な精神を放棄していいのか」

NHKで政治部記者として活躍した川崎泰資・椙山女学園大学教授は、新聞の論調を憂えている。

読者の皆さんもお気づきかもしれないが、最近、池田大作氏(74)が「創価学会名誉会長」の肩書で登場する署名・インタビュー記事が多い。

毎日新聞は、今年八月十九日、社説と同じぺージで、「憲法に『環境権』の規定を」と題したオピニオン記事を写真入りで掲載。また、米国同時多発テロの直後の昨年九月二十五日には、テロを導入口として、世相・教育、政治、憲法までにわたる二ページの、インタビューも載せた。

読売新聞は、昨年七月四日、「首相の靖国参拝は問題」と題する池田氏のインタビュー記事を掲載。

産経新聞は、昨年九月十七日から四日連続で、「宗教と国際社会」、「小泉政権と国内政治」などの記事を連載している。

ちなみに全国紙で、池田大作氏の署名記事やインタビュー記事の先鞭をつけたのは、朝日新聞である。昨年五月二十三日、「私の視点」というコーナーで、「教育基本法見直すより生かせ」という提案を掲載したのが最初だった。

前出の川崎教授は、不思議がる。

「池田氏が教育問題や環境問題の専門家だったなどと聞いたことはありません。それに、朝日が掲載した教育問題に対する提言は、それまでに創価学会の機関紙・聖教新聞や複数の地方紙に掲載された内容の焼き直しでした。全国紙は、創価学会以外の宗教団体のトップの意見を載せることはほとんどないのに、なぜ創価学会や池田氏だけを特別扱いするのでしょうか」

新聞各社の創価学会に対する不可解な対応を説明するようなリストと手紙を、小誌は関東の印刷所関係者から入手した。その人物は、「このリストは、聖教新聞が、同紙を印刷している全国の委託印刷会社に送っている印刷指定です」と説明する。

リストのタイトルは、「聖教新聞『8月編集の多色印刷作業』B」。

北は札幌・旭川から、南は奄美大島・沖縄まで、信濃毎日新聞社、新潟日報社、静岡新聞社、京都新聞社、四国新聞社、長崎新聞社、熊本日日新聞社など有力地方紙を含む三十四社の「委託印刷会社」が記されていた。

新聞社は学会から”金縛り”

これは、本当に聖教新聞の印刷所リストなのか。

その疑問を解くカギは、リストに指定されている「多色印刷作業」というカラー編集ぺージが「8/27(火)付一面」にあるか否かだ。

聖教新聞は通常モノクロ印刷である。しかし、同日付の一面にはたしかにカラー特別編集で、<インドの名門州立大学ヒマーチャル・プラデーシュ大学が授与 池田SGI会長に世界から130の『名誉博士号』>という記事があったのだ。

創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏は、このリストを見て言った。

「これは、聖教新聞の印刷所リストに間違いないでしょう。昨年九月に公開された公明党の政治資金収支報告書の平成十二年版に、党機関紙・公明新聞の印刷所リストが記載されていますが、それがすべてこのリストにありました。それに、これまでに聖教新聞を印刷していると確認された新聞社も入っています」

公明党の政治資金収支報告書(平成十二年)には、公明新聞の印刷所として、毎日新聞社北海道支社、福島民報社、静岡新聞社、中国新聞社、四国新聞社、鹿児鳥新報など十六社の新聞社名が記載されていたのだ。

その公明新聞印刷所の中で、公明党から平成十二年の印刷費がもっとも多く支払われていたのは東日印刷(東京都江東区)で、約二億九千四百万円。同社は毎日新聞系の中核印刷会社で、大株主は毎日新聞社(発行株式の約八八パーセント)と、同社系列のスポーツニッポン新聞東京本社(同約一〇パーセント)である。

リストにあった印刷会社の企業情報を調べると、毎日北海道、毎日旭川、東日オフセット、福島民報社、東日印刷、毎日新聞北関東コア、エスティ・トーニチは、毎日新聞グループであることがわかった。創価学会系新聞を、もっとも多く印刷しているのが、この毎日新聞グループ。

そして創価学会側も、この毎日新聞の中核印刷所を重視していることが、聖教新聞平成十二年一月二十五日付一面の記事からよくわかる。

<本社名誉社主の池田名誉会長、最高参与の秋谷会長は(中略)、「東日印刷」の國保仁社長、奈良敏夫顧問一行を信濃町の聖教新聞本社に歓迎。(中略)東日印刷で本紙の委託印刷が開始されてから今年で四十五年となることから(中略)。名誉会長は、次の和歌を贈り、今後とも手を携えて発展していくことを念願した。

東日と 家族の如き 聖教は 共に栄えむ 歴史を築きて>

この日、池田氏は國保社長(当時)と奈良顧問(同)に、「SGI(創価学会インターナショナル)勲章」を贈呈している。

この國保氏は、元毎日新聞取締役である。

毎日新聞社に、グループ内で両紙を印刷している事実を確認すると、社長室から次のような回答があった。

「(公明新聞の印刷は)東日印刷鰍ィよび鞄兼オフセットについては間違いありません。毎日新聞北海道支社では印刷しておりません。

(聖教新闘の印刷は)東日印刷鰍ィよび竃日新聞北関東コア、鞄兼オフセットについては間違いありません。毎日新聞北海道支社、毎日新聞旭川支社では印刷しておりません」

しかし、札幌の印刷所関係者にたずねると、

「新聞社の印刷所は、別会社にしていることが多い。しかし、公明新聞と聖教新聞は毎日新聞系で印刷されています」

公明新聞の印刷費が二番目に多いのは、日刊オフセット(大阪府豊中市)で、一億三千七百万円。同社の大株主は、朝日新聞社(発行株式の約四五パーセント)と大阪日刊スポーツ新聞社(同二四パーセント)。つまり朝日新聞グループである。

その日刊オフセット側は、

「両紙ともお得意さんです」

(総務部担当者)と認めた。

さらに、聖教新聞を印刷している東京メディア制作(東京都府中市)と南大阪オール印刷(大阪府高石市)の大株主は、それぞれ読売新聞社と大阪読売新聞社だった。ともに読売新聞グループである。

なぜ、新聞社または系列の印刷所が、創価学会系メディアの印刷をすることが問題なのか。最大の問題は、印刷代の額である。

公明党の政治資金収支報告書(平成十二年)で、公明新聞の印刷費の総額は、年間約十億六千万円。

公明新聞(全八面)の発行部数は二百五十万部なので、その印刷費をもとに、発行部数五百五十万部の聖教新聞(全十二面)の印刷代を推定すると、年間で約三十四億九千八百万円になる。

両紙を合計すれぱ、年間でなんと約四十五億五千八百万円が、創価学会側から新聞社や系列の印刷所に流れているのだ。

前出の乙骨氏はいう。

「昭和四十年代には、創価学会が自前の印刷所を作る計画もありましたが、計画段階で中止されました。それよりも、新聞社や系列の印刷所に印刷させる方が、創価学会に批判的な記事を封じるのに有効なんです。

それに創価学会は、全国紙からスポーツ紙まで毎月のように聖教新聞社の書籍広告を一面カラーで掲載させています。全国紙で一回の広告料は、一千万円から二千万円。印刷と広告で、新聞社は創価学会から”金縛り(かねしばり)”なんです」

その”金縛り疑惑”について、毎日新聞は、「(印刷と創価学会の記事は)関係ありません」(社長室)と回答。

池田氏の受賞や名誉博士号の授与を逐一報じてきた静岡新聞も、聖教新聞と公明新聞を印刷しているのを認めたうえで、「読者が必要と思う記事を掲載しています」(編集局)と答えるぱかり。

しかし、創価学会系新聞を印刷している新聞社の中には、池田会長に強姦されたと訴えた「信平事件」の提訴を記事にしなかったにもかかわらず、原告の上告棄却(敗訴)だけを報じたり、創価学会の会館内で起きた幹部どうしの不倫刃傷事件を報じないケースもあった。こういう報道姿勢を、どう理解したらいいのだろうか。

ある地方紙の幹部は、小誌に匿名でこう答えた。

「うちで聖教新聞の印刷を始めてから、創価学会や池田さんに対する批判的な記事は、掲載できなくなりました」

創価学会から新聞メディアに流れる金を問題にするのは、創価学会に問題があるからだ。

カルトに詳しい東北学院大学名誉教授の浅見定雄氏はこう指摘する。

「創価学会を脱会した人たちによって、この宗教の実態がわかりました。複数のメンパーで取り囲んで入会の意思決定をさせる。『脱会すると不幸になったり、罰が下る』などと恐怖感を与える。脱会を望むメンパーに対して、無視、非難、降格、破門などの精神的罰を受けさせる。脱会したメンパーを尾行したり、脅迫や嫌がらせをする。私は、これらの理由で、創価学会は、かなりカルト度が高いと判断しています」

これらの行為は明らかに人権侵害である。が、創価学会は『信教の自由』という”隠れ蓑”を着て、なぜか不問に付されているのである。

提灯記事を垂れ流すことなかれ

しかし、フランスでは創価学会はセクト(破壊的なカルト)として国が公表していた。

フランス在住のジャーナリスト・広岡裕児氏が話す。

「信者の人格や家庭の破壊の訴え、脱会者への圧力、政界浸透工作、それに日本での実態から内務省一般情報部が創価学会をセクトと認定し、九五年末の国民議会報告に掲載されました。セクトでも信教の自由から宗教活動はできます。ただし各宗派の全国組織フランス仏教連合は創価学会の加入を認めていません」

前出の浅見名誉教授は、政教一致についても問題視する。

「創価学会のメンパーが、基本的に公明党しか選ぱなかったり、宗教団体の指示で自民党のような特定の政党に投票するのは、政教分離の原則を破っていると言わざるを得ません」

政教一致であることは、竹入義勝・元公明党委員長が朝日新聞に掲載した回想録でも明確である。

<池田大作会長から、(民社党との)合流の話を聞かされた。(中略)池田会長は「いかようにでも対応します」と伝えていた、と西村(栄一・民社党委員長)さんから聞かされた>(一九九八年九月三日)

<創価学会の世界には独特の論理がある。「(公明党の役職も)辞めるか辞めないかは、自分で決めることではない。任免は池田大作会長の意思であり、勝手に辞めるのは、不遜の極みだ」というものだ。(中略)軽井沢で池田名誉会長に会った。「次の党大会で辞めます」「ご苦労さまでした」。初めてお許しが出た>(同九月十七日)……

しかも、創価学会の出版活動は宗教団体であるがゆえに税金を低く抑えられ、そのうえ、公明党への政党助成金は国民の血税で賄われている。

新聞社は、これらの矛盾を知りながら、それでも池田氏の称賛記事や創価学会のチョーチン記事を垂れ流し続けるのか。

浅見名誉教授は、新聞社の見識を問う。

「言論の自由を守るためには、たとえ印刷部門を別会社にしていても、創価学会には印刷で世話にはならないというくらいの見識を示してほしい。もし、良心に恥じないのなら、印刷で世話になっていることを、読者に公表すべきです。それができないのなら、雪印食品のように、営業活動をおやめなさい」

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