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給料上がらず物価上昇 アベノミクス最悪のシナリオ エコノミストの批判にも緘口令
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)と「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の中から、今回は「週刊ダイヤモンド」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。
「週刊ダイヤモンド 4/6号」の特集は『給料は上がるのか? 安倍マジックのタネ明かし』だ。「アベノミクスをレポートで批判しないように」ーー。ある大手証券会社のエコノミストは、安倍政権の経済政策(アベノミクス)に水を差さないよう、社内に指令が出ているという。大胆な金融緩和に端を発した株高は、証券会社にしてみれば、投資家の取引を活発化させ収益を拡大させる要因であり、ボロ儲けできるチャンスなのだ。
特集では安倍政権の経済政策、いわゆる「アベノミクス」を徹底検証。特集全体を「マジックショー」に見立て、第1幕『市場の仕組みを知ろう「期待」だけで円安と株高が進む』、第2幕『金融政策と物価 デフレから脱却しインフレ率2%を実現する』、第3幕『財政政策と景気 財政支出で借金が増えても財政再建できる』、第4幕『日本経済の課題 成長戦略で日本経済を復活させる』までアベノミクスの仕組みと効果、そしてリスクを解説し、終幕では「給料ダウン」「物価上昇」「増税と社会保障カット」というアベノミクスの「ワーストシナリオ」をまとめている。
今回の特集の問いである「給料は上がるのか?」を結果から言えば、2012年、円高による輸入物価低下で追い風が吹いていた流通などの内需企業と、円安で早期に業績回復が見込める自動車など、業績のいい企業から賃上げが始まっているだけ。
しかもベースアップではなく、業績に連動する一時金の部分が上がっているにすぎない。円安への大転換で企業業績が回復に向かったとしても、一般的な企業で賃金に反映されるのは3年後の15年度になる。そこまでアベノミクスが持続できるのかという根本的な問題が出てくる。
今回の知っておきたい記事は、緊急レポート『西武vsサーベラス 全交渉秘録 ~猛犬はかくして牙を剥いた』だ。
再上場時期と公募価格をめぐり、西武ホールディングスと投資ファンドで筆頭株主であるサーベラスが対立関係になっている。
04年12月、旧西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止に。05年5月には、主力銀行のみずほコーポレート銀行(CB)副頭取だった後藤が再建のため、西武鉄道の社長に就任。06年に持株会社の西武ホールディングスの傘下に鉄道会社やホテル会社を置く形に再編された。この過程で、サーベラスが約1000億円を出資・資本提携し、筆頭株主となった。この際、サーベラスが選ばれたきっかけは増資の応札に応じた27社のうち、「公益性の高い鉄道事業への理解を示し、株式の過半を取らないスタンスを明確にした」ことだが、10年ごろからサーベラスは再上場を催促し始め、12年には「(公募価格は)1800~2400円で再上場してほしい。それ以下ならやめてくれ」という要望を行うようになる。
「株価はマーケットが決めるもの」と西武側は再上場の手続きを始めるが、サーベラス側は法的措置も辞さずと、強気に出るようになった。
サーベラスは、「持ち株比率を株主総会の特別決議で拒否権を行使できる36.4%まで引き上げることを目指すTOB(株式公開買い付け)」の計画を公表。6月末の定時株主総会で、元金融庁長官の五味廣文ら3人を取締役候補として推薦する方針を掲げたのだ。
さらに、サーベラスが投資銀行3行に算定させた想定株価が、12年4月には1600~2300円だったのが、10月は1100~1500円に大きくダウンしたことを指摘。西武の事業と資産が十分な評価を得ていないことに不満と、経営改善の促進・拡充策を要望したのだ。
しかし、その内容が、不採算5路線の廃止や埼玉西武ライオンズの売却などが含まれていたため、西武の怒りどころか、日本政府や埼玉県も反対の意思を表明するようになった。
現状では、西武はサーベラスのTOBに反対。6月末の定時株主総会まで、両社の委任状争奪戦が始まることになる。
サーベラスはハゲタカファンドのひとつとされているが、今回は戦略を完全に間違えた。今回の「ダイヤモンド」のアベノミクス効果特集を見れば分かるとおり、サーベラスが1100~1500円と大きくダウンしたと批判する西武の想定株価の算定時期は、2012年10月とアベノミクス効果の直前なのだ。今、算定しなおせば、公募価格は大きく上昇しているはずだ。
しかも、不動産業界に取材すればするほど、明らかになっているのは、東急東横線、東京メトロ副都心線と相互直通運転となった西武池袋線周辺の地価の上昇トレンドだ。周辺地価が上昇すれば、西武池袋線の価値も上昇しているはずなのだ。