民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 21世紀委員会
右の検索ボックスからサイト内検索ができます。 [検索方法]
 
21世紀委員会
 

「第1回未来フォーラム」での各部会の中間報告内容

 

−組織づくり部会−

■□
委員一覧

姓 名 部会役 所属・役職
徐海錫 部会長 民団愛知県本部副団長
朴得鎮 委 員 アプロ21代表
張学錬 委 員 みずがき綜合法律事務所弁護
金永悦 委 員 韓国食品協議会代表
李敬宰 委 員 高槻むくげの会代表
安亨均 委 員 民団神奈川県本部事務局長
許東郁 委 員 民団岡山県本部議長
金保雄 委 員 韓国商工会議所連合会副会長
権清志 委 員 韓国青年商工会議所連合会会
陳信之 委 員 民団愛媛県本部事務局長

■□
中間報告・提言

◆序 文◆

1)見据えよう21世紀の同胞社会

 21世紀の在日同胞社会はどのようになるであろうか。高齢化・少子化が進み、帰化・国際結婚が増え、「在日」の人口が減少してその人口構成に構造的変化が起きている。経済環境に眼を転じると、1991年以来長期的な経済不況により業績不振に陥り、廃業・倒産に追い込まれた「在日」の中小零細企業は多い。また中高年ばかりか若い世代にまで雇用不安が広がり、今や同胞経済の基盤そのものを揺るがし始めている。一方、「在日志向」の定着化に伴う同胞の意識変化は大きく、グロバリゼーションの波は同胞のライフスタイルの多様化と価値観の多元化の影響をもたらしている。

 このように在日同胞社会をとりまく人口構成、経済環境、ライフスタイルと意識問題などで今、凄まじいばかりの構造的変化が起きている。変化に続く変化の渦中で新しい世紀、21世紀を迎えた。「民団」はどのようにして21世紀に活力ある組織づくりをしていくことができるのか。私たちの関心はまさにここにある。

 21世紀の民団を展望するには、まず在日同胞社会の現状と民団の課題を正しく認識しておかねばならない。20世紀中葉に誕生した民団は今年で創団55周年を迎える。民団は、祖国建設、反共闘争、権益擁護、行政差別撤廃などで大いなる役割を果たしてきた。しかし、21世紀においても、これまでの直線的な延長上としての理念、組織形態、組織活動で今後とも持続的発展が図れるかどうか、かなり厳しいものが予測される。

 21世紀においても、「民団」が同胞の将来を切り開いていくためには、同胞の経済基盤の再構築を始め環境、人権、文化、福祉といった多角的な分野で地域社会に寄与していくことが重要ではないだろうか。「民団」はもともとNGO・NPOとしての性格を持つ存在である。21世紀の民団は、在日同胞の生活と権利を守る活動とともに、在住外国人支援や海外貢献など幅広い活動の展開によって、地域社会に貢献する使命団体をめざすべきであろう。

 そのためには、民団の新しい理念を定立するとともに、組織の構造的機構改革、人材の養成などの課題を大胆に着手していかねばならないと考える。

2)本格的な共生社会の幕開け

祖国解放からすでに半世紀余りを経て、同胞社会では1世から2世へ、そして2世から3世へと世代交替が着実に進んでいる。祖国志向の強い1世とは異なり、2世以降の若い世代は、日本定住を当然のことと受け止め、祖国や同胞社会よりも自分自身の暮らしや生活をより良くすることに関心が移っている。

 21世紀の民団を考えるにあたって、なによりも先ず時代の転換期にある在日同胞の現状を把握しておかねばならない。

 在日同胞社会の現状を人口動態から見ると、「在日」人口は63万人余で在日外国人中トップとはいえ全外国人の過半数を切って37.7%に落ち込み、地域によってはブラジル、中国に次いで2番手、3番手にある。日本はその総人口1.33%にあたる168万余人、186カ国の外国人が暮らす多民族社会に移行している。

 在日同胞社会の人口ピラミットは、出生数の減少と高齢化が進み、いわゆる釣り鐘型を成し、各年令層がほぼ平均化しているのに対し、中国、ブラジル、フィリピン、アメリカなどの他の在日外国人はいわゆる都市型で、20歳から39歳までの年齢層が半数以上を占めている。

 在日同胞社会は65歳以上の高齢者が11.4%を占める超高齢化社会を迎え、無年金同胞に対する救済策と新たな福祉事業の実施が期待される。

 日本人との婚姻は80%以上という圧倒的な割合を占め、今後ともその傾向は続くと予想される。一方、離婚件数も激増しており、母子家庭、父子家庭が相当数生まれている。出生者数の減少は85年の日本国籍法による影響が大きいが、最近は3千人台に低下し、「在日」も少子化時代に入った。帰化者はここ数年、1万人前後の高い数値を示し、1952年から48年間に累計で243,762人にのぼる。

 出生者から死亡者を引いた自然増は、1993年からマイナスに転じており、これに帰化者数を含めると、日本の国籍法が改正された1985年以来在日同胞人口は既に実質的増加はなく、特に1995年以降は毎年1万人の同胞人口が減少している。また、与党三党の国籍プロジェクトチームが検討中の「日本国籍取得要件緩和法案」が成立すれば、在日同胞社会の人口構造に多大な影響を及ぼすと思われる。

 このように在日同胞社会の現状を概観すると、1990年代初頭の「在日」の本格的な定住・永住時代から、21世紀に入り本格的な「共生時代」の幕開けを迎えたと見ることができよう。

◆提言の骨子◆

1)民団・21世紀宣言の提唱を

 21世紀初頭における民団活動は、成員の生活安定と相互秩序を基盤にして、民族教育と文化活動を中心に新たな在日文化を創造するとともに、環境、人権、教育、文化、福祉など多角的分野で地域協力の輪を広げて行かねばならない。

 21世紀の民団は、こうした幅広い戦略によって「運命共同体」から「使命共同体」をめざしたい。そのためには、先ず「在日」自身が同じ民族という観点から国籍・信条・思想・宗教のちがいを乗り越えて、民族的結束を図って行かねばならない。真の多民族共生社会を実現するためにも、民団主導のコリアンネットワークづくりを積極的に推進していく必要がある。

 21世紀のスタートにあたり、民団の新理念の定立と今後進むべき方向性を内外に闡明にするとともに、「民団・21世紀宣言」を提唱すべきと考える。

2)民団綱領改正に着手を

 民団活動の新しい理念を打ち出すうえで、組織の目的、方針、規範となる綱領の改正に着手すべきと考える。特殊な立場から出発した民団の理念や活動は今や、地域社会また国際社会で普遍性を獲得するに至った。

 新「綱領」は、日本に住む韓民族の基本的人権を擁護し、その地位向上を図り、韓民族の伝統と文化を守り育てることを中心にすえるべきであろう。そして、民団が平和・人権・民主主義を守り、多民族共生社会をリードしていく方向性を盛り込みたい。

 現在の五大綱領のトップは「一、われわれは大韓民国の国是を遵守する」である。

 国是とは、国家としての方針を意味する。「国是」の文言は、1946年10月3日の民団の結成宣言になく、48年8月15日に大韓民国政府が樹立され、同年9月8日に民団が本国政府に正式に公認されたことに伴い、同月28日の第二宣言で初めて入った。

 国是とは本来、国民全体の意思として決定された国政の根本方針を指し、国憲に明示されている通り、国家の主権は国民にあり、国民は一人一人が自由と平等及び人間としての尊厳価値を持っているという基本的人権が保障されている。

 しかし、「国是を遵守する」という文言には、国家に対する忠誠心というイメージが顕著であり、祖国との関わりが希薄な在日の若い世代は拒絶反応を示す。在日同胞は日本に永住・定住することを前提に、日本社会のなかの地域住民として生活しているという現実を直視しよう。

 日本社会で韓民族としてのルーツを大切にし、誇りを持って生きていくという民族主体性を明確にしたうえで、日本の地域社会で共生・共栄をめざす、いわば国際化宣言を行う時ではないだろうか。

 また、「友好団員制度」を一歩前進させるためにも、「国是」の次元を止揚しなければならない。

 次に、「われわれは在日同胞の権益擁護を期する」とある。

 権益とは、権利と利益のことで、特にある国が他国の領土内で得た権利と利益を意味する。在日本大韓民国「居留民団」から、在日本大韓民国「民団」へと名称が変更された経緯を考えると、「権益擁護」ではなく、「在日同胞の地位向上」あるいは「人権を守る」という表現がふさわしいと考える。

3)団員の複合的拡大を

 1.成員の確保と若い世代の活力の注入

 21世紀においても、民団がその組織力を保持していくために何よりも必要なことは、ひとえにその成員数と若い世代の活力の注入にかかっている。

組織である以上、成員の確保は至上課題である。団員の組織離れに楔を打ち込み、より多くの団員が恒常的に組織に関心をもち活動に参加するために、これまでの親睦事業を始め各種サービス事業を軸にすえながらも、より個別的、具体的な高齢者介護、NPO、文化事業など地域に根ざした活動を展開して、成員の掘り起こしを図るべきであろう。

 若い世代の活力は、組織の活性化を生む原動力である。同化の波を払いのけ、韓国人社会を存続させるためには、民族的自覚を促す教育がその中枢的な役割を果たす。春季・秋季の母国訪問、青年会・学生会のサマーキャンプなどの事業は大事な契機と位置づけたい。また、将来の同胞社会を担う指導者を育成するための教育機関の設置と指導要領計画の作成を急ぎたい。

 2.新規・定住者(ニューカマー)の参加と連携を

日本人配偶者、留学生、就学生、就労目的などで来日し、定住するニューカマー(新規・定住者)が増えている。

 その大半は、東京の新宿・新大久保を始め大阪、名古屋、福岡などの大都市に集中しているが、地方都市の山梨県には宝石の研磨技術者が、また過疎農村の山形県最上地域には日本人と結婚した韓国人女性が暮しらている。

 困った時に助け合い、生活情報を交換するために、同郷・同窓の集まりや、カトリック・プロテスタント教会という宗教的施設、本場韓国料理を楽しめるエスニックレストランで「エスニックコミュニティー」ができている。メディアについても、衛星放送で韓国語のチャンネルがあり、母国語で書かれた新聞、雑誌も創刊されている。

 新規・定住者は、韓国語教室開講、キムチづくりから国際交流の輪を広げ、新しい韓日の架け橋になろうとがんばっている。しかし、言葉の壁、宗教の違い、健康相談、永住や帰化など問題が山積している。今、最も大きな悩みの一つは、子供の教育問題。子供に対するいじめや差別に不安を抱いている。

 同じ韓国人であるとはいえ、日本で生まれ育ち日本語でモノを考えるオールドカマーと、母国語でモノを考える本国志向の強いニューカマーとでは明らかに文化的背景が異なるが、これからは先ず、異なる文化を持つ同胞が存在することを理解し、民団の目的・趣旨に賛同する新規・定住者を団員として迎え入れよう!

 3.日本国籍の韓民族同胞(帰化同胞)を団員として迎え入れよう!

  「国民国家」の時代から「多民族共生」の時代に移行しつつある世界の潮流を「在日」自身が視座に置いて考えるべき時代に入った。もはや一つの国に一つの民族が暮らしている国はほとんどない。21世紀は、いま暮らしている「国」と自分が属している「民族」とが異なることを受け入れていくであろう。

 民団では「日本に居住し大韓民国の国民登録を完了した者」を団員と規定し、別に日本国籍を有する韓民族を対象に「本団の趣旨に賛同し、自らの意志によって入団を申請した者」を友好団員と定めている。しかし、友好団員の権利・義務についての規定はなく、特に役員就任権、選挙権、被選挙権は与えていない。友好団員制度は有名無実であり、制度として機能しているとはいえない。

 日本の地域社会で同じ韓民族である帰化同胞と手を携え、ともに生き、ともに栄えていくことは自然の流れであり、早期に規約を改正して「日本国籍の韓民族同胞」を正式に民団団員として迎え入れよう!

 

未来フォーラム・中間報告のメニューに戻る
 

民団に対するお問い合わせはこちらへ