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五輪頂点 周囲への感謝著書に
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うつ病のことも隠さず書いた著書を手に、金メダルを手にするまで「多くの人に支えられた」とあらためて感謝する小原日登美さん(右)と夫の康司さん |
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ロンドン五輪女子レスリング48キロ級で、八戸市出身の小原日登美さん(32)が金メダルを勝ち取ってから約8カ月。頂点にたどり着くまでの壮絶な戦いを、夫の康司さん(31)と連名の著書「絆があれば、どこからでもやり直せる」に記している。うつ病との戦いなど、本人や周囲しか知り得ない苦しみ、悩みも隠さずつづった本は、夫妻だけでなく家族や友人、競技生活を支えた人たちの記録でもある。取材に対し、日登美さんは周囲の支えにあらためて感謝し「どんな時も人は一人じゃない。必ず支えてくれる人がいる」と話す。
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同書は昨年12月発売。日登美さんの生い立ちや康司さんとの出会い、2度の引退と復帰、けがや減量の苦しみ、低迷した時期と、どん底からはい上がって栄冠をつかむまでの姿を、夫妻それぞれの視点で描いた。
中でも、うつ病で引きこもっていた状況を書くことに、日登美さんは「周りの反応が少し怖かった」と打ち明ける。だが、読者から「感動した」「励まされた」と反響があり「自分の経験が誰かの助けになることが一番うれしい」と喜ぶ。
うつ病に悩む人やその家族に対しては「周囲になかなか理解してもらえず、本人にとっても家族にとっても苦しい病気。でも、生きていること自体が幸せだということを忘れないでほしい」とエールを送る。立ち直れたのは、自分の弱さを受け入れたからと語り「感謝の気持ちを持ち、命の大切さに気付いた。うつ病の経験も無駄ではなかった」とした。
一方、ロンドン五輪の試合日が8月8日、計量の順番も63キロ級五輪3連覇の伊調馨選手(28)とそろって「8」だったことに、「故郷・八戸の8が続いた。8は横にすれば∞(無限大)。負けないという気持ちが自然に湧いた」と当時を振り返り、「八戸は私、そして康司のふるさとで原点の場所。いつか帰りたい」と話した。
今は競技の一線から退き、重圧から解放された。「レスリングが好き、楽しいという気持ちがあったからこそ続けることができた」と心から思うという。指導者としても楽しさや礼儀、続けることの大切さを教えたいと抱負を語る。
康司さんは、日登美さんについて「努力を続けて世界チャンピオンになった。その努力は生半可なものではなかった」と妻への敬意を隠さない。さらに、自分も五輪を目指し、けがなどで夢はかなわなかったが「やってきたことが、日登美をサポートする上で大きく役立った」とし、県民に「失敗を恐れず挑戦してほしい」と、メッセージを送った。
夫妻の今後の目標は「一番に、家族の幸せ」。さらに、子供をもうけ「自分が教わってきたようにレスリングを教えたい」と日登美さんは言う。ただ、自らが苦しんだ減量の厳しさもあって「女の子だったらレスリングをさせないかも」と笑った。
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