クローズアップ2013:福島第1、汚染水漏れ 場当たり仮設の弊害
毎日新聞 2013年04月07日 東京朝刊
東京電力福島第1原発で判明した、地下貯水槽からの放射性汚染水漏れトラブル。専門家は、汚染水に含まれる高濃度塩分が、貯水槽の遮水シートの機能低下につながったと指摘する。事故から2年、東電は増え続ける汚染水の処理に追われ、こうした仮設の設備でしのぐ「自転車操業」を続けてきたが、そのほかにもトラブルやミスが頻発。綱渡りにもほころびが目立つ。
◇濃塩分で機能低下か
地下貯水槽は地面を掘り下げて、その上を3層の防水シートで覆った構造。産業廃棄物処分場やため池も同じ工法が使われている。3層の構成は、内側から1、2枚目がポリエチレン製のシート(厚さ1・5ミリ)。3枚目は粘土鉱物を主成分とする「ベントナイト」(同6・4ミリ)といわれるもので、水に触れると内部の成分が膨らんで水の通り道が狭まり、遮水する機能がある。
東電は、本来は汚染水が入り込むことがあり得ない2、3枚目の間に放射性汚染水があるのを発見。1立方センチ当たり6000ベクレルの放射性物質を検出した。これにより、内側から1、2枚目がともに破れている可能性があると推定した。
さらに3枚目と、土壌との間からも汚染水が見つかったが、東電は3枚目については「シートの継ぎ目から漏れている可能性がある」とみる。東電は三つのシートについて、使用前に実際に水を入れた漏えい試験を実施したが、これまで異常はなかった。
一方、土木工事に詳しい専門家は、貯水槽にあった汚染水が濃縮塩水だったことに注目している。
茨城大の小峯秀雄教授(土木・地盤工学)は、(1)汚染水に含まれる高濃度塩分によってベントナイトが膨らまず、防水機能が発揮されなかった(2)汚染水などの重みでシートの継ぎ目に負荷がかかり、隙間(すきま)が生じた−−とし、複合要因が重なったとの見方を示す。
小峯教授は「3枚目のベントナイトに、想定外の塩水が浸入したことが原因ではないか」と言及。ベントナイトは厚いほど防水性が増すため、シートの厚さ不足も背景にあるとの見解を示した。
岡山大の西垣誠教授(地盤環境学)も「真水であれば十分耐えられたが、濃縮塩水では1、2枚目が破れると外部へ漏れる可能性が高い」と語った。
こうした指摘に、東電広報部は「塩分の影響があることは一般論として把握しているが、それでもある程度の遮水性はあると期待している」としている。1、2枚目の破損原因について、事前の点検漏れの可能性もあり、東電は汚染水を別の地下貯水槽に移し替える作業を終了次第、本格的な原因調査をする方針。【鳥井真平】