緊迫がさらにエスカレートしている北朝鮮情勢
北朝鮮情勢が緊迫してきている。
7日星条旗新聞は「在韓米軍トップのサーマン司令官は上院、下院の委員会で報告予定であったが、事態の緊迫度で米国訪問を当面延期した」と報じている。
北朝鮮は在北朝鮮の外国人に対して、「10日以降の安全は確保できない」と連絡していることから、10日以降の情勢が注目される。
北朝鮮は様々な行動をとっているが、次の2つが代表的である。
① 国営の朝鮮中央テレビが伝えたところでは、同国外務省は安保理に「米国と韓国が核戦争を挑発する動きを見せていることから、朝鮮半島は現在、一触即発の核戦争状態にある」と公式に通達した(3月26日ロイター)、②北朝鮮政府は4月5日、各国大使館や国際機関に対し、10日以降、武力衝突が起こった場合に安全を保証できないとして避難の可能性の検討をするようにとの要請がなされた(CNN等報道)。
更に、北朝鮮の軍事的対応については、CNNは「ある米当局者が5日、北朝鮮は東岸に配備している移動式発射台に2基の中距離ミサイルを搭載したと述べた」と報じている。
これまで、各国の対応を見てみよう。
まず米国は、ヘーゲル米国防長官は28日、北朝鮮の「挑発的な行動と好戦的な言葉が危険を高めている」と指摘、「最悪のシナリオ」を想定して、金正恩体制の言動を「真剣にとらえる必要がある」と述べた。
これより前、3月19日、19日、核兵器搭載可能な米軍B52戦略爆撃機が米韓合同軍事演習に参加している。
但しCNNは米国の対応は変化してきているという報道を行っている。
「北朝鮮が挑発的言動を激化させ、米国との間で軍事的緊張が高まる中、米国防総省の当局者は4日、米軍の配備強化が事態を一層緊迫化させた可能性があるとの認識を示し、米国が北朝鮮に対する発言のトーンダウンに努めていることを明らかにした。
米国務省のヌーランド報道官は同日、北朝鮮の脅威に対して米国は防衛策を講じる必要があったと強調する一方で、「もし北朝鮮が国際的義務を果たし、冷静になるのであれば、我々も方向を変えられる」と述べ、北朝鮮が態度を変えれば外交的解決に力を入れる姿勢を示した。」
中国、ロシアに関しては、先月22日中露外相歓談では、①北朝鮮の核実験について「中ロとも容認できない」と非難する、②一方、「(北東アジア)地域の現在の状況を軍事展開のために利用してはならない」とも述べ、米国などの強硬姿勢を牽制した。
その後もほぼ同様の対応が続き、王毅外相は4月6日、国連の潘基文事務総長と北朝鮮情勢について電話会談し、王氏は軍事的緊張が高まる現状に「重大な懸念」を表明したうえで、各国に冷静に対応し、緊張緩和に努力するよう求めた(7日読売新聞)。
こうした緊迫を招く背景には次の4つがある。
① 北朝鮮国内状況
金正雲の北朝鮮内部の掌握が十分でない。この中、軍強硬派が発言の度合いを強めている。
② これにともない、北朝鮮が(い)米国に核兵器で先制攻撃するという新しい脅しがある、(ろ)休戦協定が無効といい、韓国との直接対話電話を切った等の行動をとった
③ 米国・韓国がこれに対し軍事的に対応する姿勢を示し、具体的に米軍B52戦略爆撃機の演習を行った、
④ 従来北朝鮮を擁護に回った中国が北朝鮮を突き放している。特に習近平は北朝鮮への同情はほとんどないとみられている。
この中、日本の動きはある意味滑稽である。読売新聞は下記報道を行った。「小野寺五典防衛相は7日、北朝鮮が新型弾道ミサイルを発射した場合に備えてミサイル防衛(MD)の迎撃態勢に入るため自衛隊に「破壊措置命令」を出した。政府は「国民に不安を与えないようにする」として発令を公表しない方針。複数の政府関係者が明らかにした。北朝鮮のミサイルをめぐり過去3回の破壊措置命令を出しているが、今回は発射予告がないのに発令する初のケースとなった。発令に先立ち菅義偉官房長官は7日午後、福岡市での講演で、新型弾道ミサイルをめぐる北朝鮮の動きに関し「国民の生命と安全を守るため、万全の態勢で警戒している」と強調した。」
大陸間弾道弾は1000キロ以上の上空を飛ぶ。ミサイル防衛では射程がせいぜい2-3百キロ。全く届かない。
落下時は秒速2-7キロ。目標が不明な時、撃ち落としは全く不可能。
これを国民に「国民の生命と安全を守るため、万全の態勢で警戒している」と官房長官が言う。原発であれ、TPPであれ、ミサイル防衛であれ、嘘のセールスをするのが安倍政権だ。国民も考えればわかるのに、あえて考えようとしない。
対北朝鮮政策で最も重要なことは「軍事的手段で体制転覆を行わない」ことを示すことである。
現在の北朝鮮の動きを見れば、米韓軍事演習に極めて過敏になっていることがわかる。西側が軍事手段によって体制返還を目指すなら、北朝鮮がミサイル開発をし、核開発をするのは自然な発想である。
危機へのエスカレーションは避けねばならない。
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