アメリカで生活して思ったこと

10月 20, 2012 under プライベイトなこと, 寄り道

一定期間外国で生活すると、
「自分がこれまで生きてきた世界とは異なる価値観の中で多くの人が生きている」
と現実感をもって認識させられます。

その認識はその人の人生観や価値観に影響し、
人間の幅を広げてくれます。

 

私がアメリカにいったのは30年以上も前のことで、
当時日本は今の韓国や中国のように発展途上で、
自分の国に自信を持ち始めた時代だったと思います。
そういうときにアメリカを経験して、
目に見えない貴重な勉強をしたと思います。

アメリカ滞在は僅か1年足らずでしたし、
もちろんアメリカ全体を見たわけでもないし、
「私」という特定の人間が感じたことですから、
文化人類学的にどうこういうほどの大げさなことではありませんが、
自分なりに感じたことは多々あります。

 

アメリカで最初に思ったのは、
アメリカは広くて美しく国の力が強い国だなという実感です。

そして次に思ったのは、日本に比べて人の生き方が厳しい国だということでした。

当時、日本に比べたらアメリカはずっとお金持ちの国だったと思いますが、
私としては予想もしなかった経験をしました。

ピッツバーグの冬はとても寒く、
ある日宿から大学までの道で、きらきらと輝くダイヤモンドダストをみることができました。
すぐ宿に帰ってカメラを持ち出し、その情景をカメラに収めました。

そういえば、その年ピッツバーグ・パイレーツと同スティーラーズは同時優勝し、
スティーラーズの優勝ではダウンタウンは大騒ぎのようでした。

大学では私は数人の大学院生とか助手とかがいる部屋で、
仕切りで囲われた一番奥の席を与えられたいました。
昼食でカメラを机の上において、確か部屋に鍵をかけて、食堂に出かけましたが、
食堂から帰ってみるとカメラがありません。

名門大学の研究者の部屋でカメラが盗まれるとは夢にも思いませんでした。

研究室にいって「カメラが盗まれた」というと、もちろんみんな気の毒がってくれましたが、
「僕は鍵をかけていた自転車を3階から盗まれた」という人がいて、
「アメリカはそんなものなんだ 」とアメリカの一断面を見て少々驚きました。

多分警察官だと思いますが、大学には警備員が常駐していて、
私がカメラを盗まれた時も、その警備員から事情聴取されました。
これもまたアメリカの現実です。

またあるとき、研究室からの帰りに、
学生らしい白人の若者があわてて逃げ出し、
その後をおじさんが大きな声で怒鳴りながら追いかけています。
タイヤのホイールカバーがカラカラと音をたたていました。

おそらく学生はホイールカバーを盗もうとしていたのだと思います。
決してみすぼらしい恰好をした学生ではありませんでしたが…

 

ある日テレビをつけたら、プロレスをやっていました。
小柄なレスラーと巨漢の悪漢風です。

最初小柄なレスラーは巨漢にメタメタやられています。
第二ラウンドに入っても相変わらず小柄レスラーは痛めつけられています。
「次のラウンドこそ反撃するよな」と思っていましたが、
反撃できず、何ラウンドまでやったか忘れましたが、
結局小柄は巨漢に痛めつけられて終わりました。

私としては「え?嘘」という心境です。
日本人からしてみれば判官びいきですから、
「弱いものが最後には強いものに勝つ」というストーリーが好きですが、
アメリカ人は違うようです。
弱いものはやっぱり弱いのです。

 

アメリカにいく前、映画などでみていると、
「アメリカの女性はちやほやされて甘やかされているのだ」
と私は思っていましたが、それは間違いのようです。、

研究室の秘書のおばさんは朝から晩まで、
毎日毎日タイプを打っていました。
他の研究室の秘書さんも同じです。

街では拳銃をぶら下げた女性警察官は珍しくないし、
バスの運転も女性がやっていました。

アメリカは大変合理的で、女だから男だからでなくて、
女も男も優秀であれば尊敬されるし、
ちやほやされるのは美人であったり、セクシーであったりの人で
ただの女は決して特別扱いされはしません。

この点でいえば日本の女性の方がよほど甘やかされていると思います。
「甘やかされている」といういい方は正しくないかも知れません。
日本の男が女性を男の世界に入れないので、
結果として女性は社会性を欠き、
「女だから」として、女をそして自分を許しているのだと思います。

また私は長いあいだ、日本の建築学会に所属していましたが、
沢山の委員会があって、その委員会は何年も何年も続きます。
おそらく10年以上続く委員会も珍しくなかったのだと思います。
そんなに長期の研究なら、自分の研究室で生涯をかけて研究すればいいではないか。

学会で委員会を持つということは教授の縄張りなのです。
その縄張りのまわりには、系列の研究者が群がっています。

東大の教授たちは決してその縄張りを離そうとしません。

これは一例にすぎませんが、
確かに日本には既得権益に胡坐をかいている社会がたくさんあると思います。

 

アメリカに比べててみて、日本には「甘さ」が付きまとっています。

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