社説[砂上の返還計画]現実と遊離し不可能だ

2013年4月7日 09時30分
(13時間23分前に更新)

 小野寺五典防衛相は6日来県し、嘉手納基地よりも南にある普天間飛行場など六つの米軍基地の返還統合計画について、仲井真弘多知事や関係市町村長に説明した。

 今回の返還計画は、地元の反対が根強い中で、(1)実現を担保するものがなく、(2)返還期限の設定もあいまいで、(3)普天間の返還時期が『2022年度またはその後』とされ、事実上、固定化を認める内容になっている。

 さらに、(4)ほとんどが県内移設を前提にし、(5)嘉手納以北の住民からすれば、基地の拠点集約化に伴う大幅な負担増になっており、(6)将来は、嘉手納基地を中心とする中部の基地群と辺野古を中心とする北部の基地群が半永久的に固定化されるような内容だ。

 那覇港湾施設(那覇軍港)は「28年度またはその後」に返還とある。日米が那覇軍港の返還に合意したのは1974年のことである。仮に計画通り実現したとしても、合意から半世紀以上もかかって県内移設することになる。

 県内玉突きによって負担を沖縄内部で完結させようとするこれらの返還計画は、理不尽で、不公平で、無理があり、不条理だ。なぜ本土ではだめなのか、まともな説明を一度も聞いたことがない。

 米国は期限設定に難色を示し続けた。無理に数字をいれさせたのは安倍晋三首相の意向である。安倍首相は日米首脳会談で牧港補給地区の先行返還をオバマ大統領に要請したといわれるが、実現していない。

 この計画は「砂上のプラン」というしかない。

    ■    ■

 96年の普天間返還合意以来、沖縄の人たちは、日米政府の二転三転する計画に振り回され続けてきた。地域が、家族が、親戚が、賛成と反対に分かれていがみ合うこともあった。

 普天間の返還時期はこれまで何度も変わった。ころころ計画が変わっても地元自治体はいつも蚊帳の外。自治体や住民の政府に対する不信感は根深い。

 日米両政府が返還統合計画を発表した5日、名護市では「辺野古埋め立て申請の撤回を求める緊急市民集会」が開かれた。

 返還合意から今年で17年。市民投票や県民投票、各種の首長選挙や国政選挙、ほとんどの選挙で示されたのは移設反対の民意である。

 埋め立て申請を承認するということは、民意に背くだけでなく、過去17年の、県民の血のにじむような叫び、異議申し立てを、何もなかったかのように、水に流すようなものである。あってはならないことだ。

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 普天間飛行場へのオスプレイ配備によって訓練負担が著しく増えた地域の一つは宜野座村城原区である。同区の大嶺自孝区長は言う。

 「北部は無人島じゃない。今以上に増強して『負担軽減』なんて、政府は何を考えているのか。怒りで体がガタガタ震えて止まらない」(6日付社会面)。大嶺さんの叫びは両政府に届くだろうか。

 辺野古移設を前提とする限り、返還統合計画は袋小路から抜け出せないだろう。

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