米軍基地が集中する沖縄の負担を減らすため、日米両政府が基地の返還計画をまとめた。人口が多い県南部の6基地について、返還の時期や手順を定めた。2013〜28年度に、約1千[記事全文]
福島第一原発の事故で損害を受けた住民の不動産や家財について、賠償手続きが始まった。精神的苦痛や仕事を続けられなくなったことへの賠償はすでに支払いが進んでおり、主な賠償項[記事全文]
米軍基地が集中する沖縄の負担を減らすため、日米両政府が基地の返還計画をまとめた。
人口が多い県南部の6基地について、返還の時期や手順を定めた。2013〜28年度に、約1千ヘクタールの返還をめざす。
在日米軍基地の73・8%が沖縄にあり、計画が実現しても73・1%に下がるだけだ。わずかではあるが、負担が減るなら意味はある。着実な進展を望む。
ただ、返還時期の書きぶりには首をかしげる。「22年度またはその後」とされた普天間をはじめ、いずれも「またはその後」がついている。
仲井真弘多知事はきのう、説明のため沖縄を訪れた小野寺五典防衛相に「いつになるかわからない、としか読めない」と疑義を呈した。防衛相は、あいまいにしたわけではないと強調したが、納得しがたい。
なぜこんな表現になるのか。背景には、返還計画の大半が代替施設の整備を前提にしていることがある。返還対象の約1千ヘクタールのうち、県内の別の場所に機能を移した後に返還するとされたのは841ヘクタールにも及ぶ。
その移設先の自治体には、防衛相がきのう初めて計画を説明した。市長らからは「困る」といった声が相次いだ。
どうやって返還を進めるのか。留保をつけたとはいえ、時期を示した以上、「書いただけ」では済まされない。政府は、みずから努力を尽くす義務を負ったといえよう。
481ヘクタールと計画全体の半分近くを占める普天間の返還は、従来どおり名護市辺野古への移設が前提とされた。
知事はきのう記者団に、22年度以降では「普天間に固定化するのと同じ」と語り、県外移設を改めて主張した。県内全市町村が反対する辺野古への移設は依然、現実味に乏しい。
とはいえ、普天間を理由に、ほかの基地の返還を遅らせてはならない。可能なものは計画を前倒ししてでも返還すべきだ。
日米両政府は昨春、普天間移設と、ほかの基地の返還は切り離すことで合意した。ところが、米政府内からは再び「海兵隊のグアム移転と普天間移設の前進によって、嘉手納基地以南の多くの土地の返還が可能になる」(国防総省報道官)といった発言が聞かれる。
そんなやり方では何も進まないのが、この間の教訓だ。膠着(こうちゃく)状態が続けば県民の反発はさらに強まり、米軍の駐留が難しくなるおそれすら出てこよう。
東アジア情勢が不安定さを増すなか、日米両国とも、そんなことは望んでいないはずだ。
福島第一原発の事故で損害を受けた住民の不動産や家財について、賠償手続きが始まった。
精神的苦痛や仕事を続けられなくなったことへの賠償はすでに支払いが進んでおり、主な賠償項目がそろう。
不動産の賠償は、原発に近い11市町村で警戒区域と計画的避難区域に指定された地域に土地や建物を持つ住民が対象だ。
両区域は「帰還困難」「居住制限」「避難指示解除準備」の3区域への再編作業が進んでいる。まもなく11市町村すべてで見直しが終わる予定だ。
どれくらいの賠償金が支払われるのか。そもそも自宅へ戻れる時期はいつごろか。
いずれも、被害者が生活を立て直し、再出発する際の大前提となる。
事故から2年あまりが過ぎた今も、そのスタート地点が見えつつあるかどうかという段階にある。原発事故の重大さを改めて感じる。
被害者の間では、まとまった金額になりうる不動産賠償への関心は高い。東京電力は昨夏、賠償額を算定する際の考え方や計算式を公表し、地元自治体などと調整を続けてきた。その結果、建物への賠償は昨夏の基準より増額された。
しかし、被害者を支援する弁護士らによると、住宅の広さや築年数の違いで金額差が大きいという。数百万円程度にとどまる人も珍しくないようだ。
損害賠償を原則とする限り、基本的には所有する財産や事故前に得ていた所得が上限にならざるをえない。
東電による賠償が生活再建に十分かどうか、被害者の状況に目を凝らしていくのは、国の役割である。
賠償や除染について、国が資金を立て替えつつ東電からすべて回収するという現在の仕組みは、その額の大きさを考えれば、いずれ破綻(はたん)する。
賠償とは別に、国が直接、税金で生活再建を支援することを含め、新たな枠組みづくりを急ぐ必要がある。
避難住民へのアンケートによると、自宅に戻るかどうか「判断できない」という人が3〜4割を占める市町村が目立つ。今後の判断材料では、放射線量や社会基盤の復旧見通しとともに、「賠償額の確定」があげられている。
自宅に戻りたい人も、新たな場所での再出発をめざす人も、できるだけ経済面での不安を抱えずに判断できる環境を整えなければならない。
それが、原発事故に直面した私たち国民全体の務めだろう。