教科書があぶない!
子どもたちの未来を守るために、教科書採択への政治介入に反対しましょう!
柴田たみおさんも下記のアピールに賛同しています。
子どもたちの教育を守るとりくみに、ぜひご協力下さい。
<アピール>名古屋市民のみなさんに訴えます
教科書があぶない!子どもたちの未来を守るために、
教科書採択への政治介入に反対しましょう!
みなさんは、「つくる会」系教科書という言葉をご存知ですか?
2001年、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)を名乗る団体が、従来の教科書の歴史観は「自虐的」で子どもたちが自分の国に誇りをもてないと批判し、この主張にそった教科書を「扶桑社」から出版しました。その後、「つくる会」が内部分裂し、現在はこの流れをくむ「自由社」と「育鵬社」が中学校歴史・公民教科書を発行していますが、これらの教科書のことをいいます。
「つくる会」系の教科書の特徴は、歴史や社会に関する学問や科学の成果とは無縁の、特異でゆがんだ解釈を子どもたちに刷り込もうとするところにあります。
歴史教科書では、①アジア太平洋戦争での惨禍について、日本人の被害や犠牲についてのみ記述し、アジアの人びとが被った被害や犠牲を無視する結果、侵略や加害の事実が充分理解できないものとなっています。②また、神話世界の存在である「神武天皇」を「初代天皇」と記すなど、神話と歴史とを混同しているため、科学的な歴史認識は育ちません。③そして、教科書 全体を通して民衆の姿はほとんど記述されず、「偉人」の業績だけが強調される結果、歴史の主体を正しく理解できないものとなっています。
公民教科書では、①憲法の「改正」を誘導するねらいから、戦前の大日本帝国憲法を先駆的な憲法だと賞賛し、現在の日本国憲法は米国による「押しつけ」であると主張しています。②そのため、日本国憲法の三原則(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)をないがしろにし、国家権力から国民の人権と普遍的な権利を守るという近代憲法の基本的理念を欠落させています。③そして、国家や「公共」を前面に押し出し、個人は国家に無批判に従うべき存在であるかのような記述になっています。④さらに原発問題に関しては、その重大な危険性を指摘するのではなく、「経済的効率」を優先する立場から原発を容認、推進する表現になっています。
このように、「つくる会」系の歴史教科書は、歴史の真実をゆがめ、歴史学・歴史教育の学問的な成果を真っ向から否定する非科学的なものと言わざるをえません。また、公民教科書は、平和と人権についての憲法の理念を正しく理解することも、社会や経済を考える視点を育てることも困難にするものとなっています。当然、これらのことは、子どもたちの学びや成長に深刻な影響や不利益を及ぼします。中学校で獲得すべき歴史認識や憲法原則に関する基礎的な知識や教養を欠くため、他社版の教科書を学習した子どもたちとのあいだに学力格差が生まれます。そのため、高校受験に際しての不利益や、高等学校での歴史や公民分野の学習にも支障をきたすなどの影響が危惧されます。
またその内容が、偏狭なナショナリズムと戦争のできる「国家」を容認するようなものとなっているため、市民にとっては怖い存在です。私たちは、子どもたちを再び戦争に駆り立て、戦禍の犠牲にするような過ちを二度とくり返してはならないと考えます。
教育の目的は、子どもたちが、自国の歴史や社会・文化に関する公正で客観的な事実にもとづく学習と、平和と人権を尊重する憲法の学習とをつうじて、平和な国と社会を築き、さらに発展させていくための力を育てていくことにあります。教科書の採択も、当然、この教育の目的に適うものでなければなりません。
したがって、教科書の採択に当たっては、実際に教えている各専門の教員の意見が尊重されることが大切です。現在の教科書の採択方法は、教科書採択地区の教育委員会で構成する協議会が、現場の教員による調査員報告等を踏まえた検討委員会の報告をもとに決定することになっています。しかし、近年、一部の首長が「つくる会」系教科書を支持する教育委員を選任し、調査員報告や検討委員会報告など現場の教員の声を無視して、教育委員の多数決で採択させる例が出てきています。学校現場で子どもの教育に携わっている教職員の意向を考慮せず、首長の意を受けた教育委員が恣意的に教科書を採択することは教育に対する不当な政治介入そのものです。
河村市長が南京虐殺否定発言を繰り返していることは周知のことです。河村市長は、議会においても「つくる会」系教科書の採択に意欲を見せる発言をしており、この間こうした目的で教育委員の選任を行ってきました。すでに6人の教育委員のすべてが河村市長に選任され、次回の採択時に「つくる会」系教科書が採択される危険性が強まっています。さらに心配なことは、「つくる会」系教科書の採択を推進しているのは、河村市長だけでないことです。「歴史教科書を考える名古屋市会議員の会」代表である藤沢忠将氏が「育鵬社、もしくは自由社の教科書が名古屋市の子どもにとっては最適」と発言するなど、この動きを後押しています。藤沢氏はタカ派の「日本会議名古屋市会議員連盟」の会長も務める人物で、こうした勢力が「つくる会」系教科書の採択に向けて活発に動いています。
子どもたちが自らの判断で公正で平和な未来を築いていくためには、日本が歩んだ近・現代史を、正しく学ぶことができる機会が保障されなければなりません。日本の近・現代史を、戦争の実相を含めて歴史事実として正面から見つめることが大切です。こうした視点こそ、日本の民主主義を支える重要な指標となるものです。
私たちは、平和と人権が尊重され、差別や偏見のない日本社会の発展をめざすなかで、アジアや世界中の人びとと心の通じ合う友情や友好を築くことが可能になると考えます。だからこそ、私たちは「つくる会」系教科書の採択には、断固として反対します。そして、教科書採択が子どもたちの学習にとって最も良いものとなるよう教科書問題に関する学習会や署名運動をおこなっていきます。みなさん、みなさんが名古屋市の教科書採択への不当な政治介入に反対し、「つくる会」系教科書から子どもたちを守る市民の輪に加わってくださるよう心から訴えます。
2013年3月28日
アピール呼びかけ人・団体(順不同)
憲法の理念を生かし、子どもと教育を守る愛知の会
共同代表 榊 達雄(名古屋大学名誉教授) 共同代表 小林 武(沖縄大学客員教授)
中嶋 哲彦(名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授)大橋 基博(名古屋造形大学教授)照本 祥敬(中京大学国際教養学部教授) 久保田 貢(愛知県立大学教育福祉学部准教授)
愛敬 浩二(名古屋大学大学院法学研究科教授) 高木庸太郎(愛知東邦大学非常勤講師)
西 秀成(日本近代史研究者) 水野 智之(中部大学人文学部准教授)
鳥居 達生(名古屋大学名誉教授) 石川 賢作(日中友好協会愛知県連合会会長)
伊藤 康子(愛知女性史研究会) 佐藤 政憲(名古屋市立大学講師)
横地 徹(県史編纂委員)
子どもたちに「戦争を肯定する教科書」を渡さない市民の会 事務局長 伊藤 和彦
愛知県教職員労働組合協議会議長 内田保
名古屋市立高等学校教員組合執行委員長 小島俊樹
愛知県高等学校教職員組合執行委員長 笹山 茂晃