アーチを放ち雄叫びを挙げる福留【拡大】
白木のバットを高々とほうり上げた。5時間1分の大激戦に終止符を打つ白球が右翼席へと吸い込まれた。6年ぶりの日本球界での一発。一塁を回る福留が雄叫びを上げた。
「ここで久保に負けがつくのと引き分けるのとでは違うし。勝ちが付いてよかった。修正というより気持ちだけ。(試合が)長くて疲れました」
3時間半ルールが今季から撤廃され、新守護神の久保に4イニングを任せなければいけない緊急事態に陥った。先頭打者として迎えた延長十二回だった。
「何とかしたいと思って打席に入った」
元虎・江草の真ん中高めの139キロ直球を一閃した。バットが体に巻き付くような独特のフォロースルーで広島の夜空に高々と舞い上げた。2007年7月3日の広島戦(福井)以来となる日本でのアーチ。ベンチ前で祝福の嵐に身を任せた。
野球欲に飢えて虎に飛び込むことを決めた。米大リーグ、ホワイトソックスに所属した昨季は出場わずか24試合。本塁打なし。大半がマイナー暮らしだった。
「普通の観光バスで5、6時間も移動する。休憩は1回だけ」。車内ではDVDを鑑賞し、寝ての繰り返し。そのとき衝撃的な光景を目のあたりにした。「腰が悪い人はバスの床にマットを敷いて寝ていた。それをまたいでトイレにいく」。飛行機の場合も午前4時に起床し、午前7時発の便に搭乗。ナイター後にバスで6時間移動し、翌朝5時に到着。その日に試合もあった。そんな経験が虎での日本球界復帰をうながした。