世界はますます民主社会に向かっています。21世紀も13年目に入って、この傾向はますますはっきりしてきています。
17世紀にイギリスから世界に広がり始めた市民社会の民主主義は、最初金持ち市民だけのものであり、労働者や少数民族や女性は圏外に置かれていました。それでも、民主主義を採用した社会はそれだけ早く強くなったので、植民地争奪戦にも勝ち残り、産業革命にも先頭を切って世界を制覇しました。しかし、まさにそういう社会の支配圏内で、最初の植民地解放戦争が起こってアメリカのような共和制の国家が生まれ、さらには労働者の選挙権獲得運動が起こって市民社会が民主社会に高度化していく動きが始まりました。
19世紀から20世紀にかけて、こうして、民主主義を市民だけから労働者や少数民族や女性に拡張していく動きが世界に広まり、主要国のほとんどが男女平等の普通選挙を採用するようになっただけでなく、植民地から自らを解放して独立した諸国のほとんども、同様の普通選挙を採用するようになりました。労働者と農民その他の一党支配で社会を改革しようとした一部の国は、かえって非民主主義に陥ってしまいましたが、それらのほとんども今では民主化されつつあります。民主化の波は中国のような大国ばかりでなく、中東諸国のようなイスラームの影響の強いところででも、今やとどめようがなくなっています。
すべての構成員が選挙その他をつうじて自分たちの社会のあり方・行き方を決めていくのが民主社会です。ですから民主社会では、株式会社という形で市民たちが始めた企業ばかりでなく、金持ちとはいえない普通の主権者が少しずつ資金を出しあって、民主社会と同じように一人一票制で運営していく協同組合の事業がとても大切なのです。協同組合も19世紀の半ばにイギリスの生協から始まりました。日本の大学生協は、それが世界に広まっていくことを予見した人たちの、先駆的な事業から始まっています。
国際協同組合年だった2012年、国際協同組合同盟は生協発祥の地マンチェスターに集い、協同組合の意味をもっと世界に広め、活動を活発化するために、さかのぼって2011年から来る2020年までの10年を「協同組合の10年」とすることを決議しました。これを受けて日本でも国際協同組合年実行委員会が組織と運動の改組存続を決め、大学生協は小さいながらもその中核的メンバーの一つとして活動を続けています。
他方、民主化の進む社会では、そのこれからの中核的担い手の養成が喫緊の要事となってきており、大学教育と、それを受けて自ら育って社会に出ていく学生の支援が大きな課題となってきています。その学生支援を、戦前の先駆例を受けて戦後主として担ってきているのが日本の大学生協です。全国に220ほどの単位生協があり、組合員総数が140万にも及ぶ大学生協は、日本にしかありません。日本の大学生協は、このことを自覚すると同時に誇りにし、自分たちの運動を日本だけでなくアジアにも世界にも広めていく義務があるのです。
東日本大震災と福島原発事故からの復興がはかばかしくないなかで、日本社会の根底からの再編をふまえた再建が必要になっています。大学生協はそれ自体この再建に貢献するとともに、組合員である学生の成長を支援し、日本社会のこれからの中核的な担い手の養成に全力を挙げて取り組んでいかなくてはなりません。組合員の皆さんは、どうかこのような文脈で協同・協力・自立・参加のビジョンとアクションプランを読み直し、それぞれの場での生協活動に積極的に加わってください。
まだ生協のない大学の学生および教職員の皆さんも、このページやここからリンクできる諸ページをお読みいただき、大学生協と協同組合のさまざまな活動にぜひご参加ください。大学生協は日本民主社会のこれからの担い手、すなわち主権者を育てる有意義な事業なのです。
全国大学生協連/会長理事・庄司興吉のページ
大学生協をより深く理解していただくため、要所々々でおこなった講演などを掲載しています。