世界各国の協同組合でつくっている国際協同組合同盟(ICA)は、1995年のICA 100周年記念マンチェスター大会にて、「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」を採択し、「協同組合の定義・価値・原則」を定めました。
これを受けて、日本生協連と全国の生協は、1997年に「生協の21世紀理念」を策定しました。この理念は、人類史的な社会の変革期に、何よりも人々の幸せを大切にして行動するという、生協の変わらぬ信条と未来への展望を、凝縮させたものです。
人口減少や少子高齢化、地球環境問題、食料・農業問題など、現在私たちの周りにはさまざまな問題があります。これらの問題は、私たちの世代だけでなく、子どもたち世代へと大きく影響を及ぼします。
全国の生協で働く仲間、組合員・消費者のみなさんと一緒に10年後の生協のありたい姿を描いたものが、「日本の生協の2020年ビジョン」です。
「日本の生協の2020年ビジョン」は、2011年6月の日本生協連 第61回通常総会にて、承認されました。
私たちは今、あらためて人間らしいくらしの創造と持続可能な社会の実現に向けて、新しい社会の枠組みや経済の構造を創り上げていかなければなりません。新たな社会づくりには、協同組合の価値・仕組みの有効性を発揮し、社会の中で協同組合が積極的な役割を果たしていくことが期待されています。
「日本の生協の2020年ビジョン」は、日本の生協運動全体を視野に置きつつ、主に地域購買生協のありたい姿を共通認識にするためのものです。
変化が激しい時代だからこそ、先を見通したビジョンが必要です。生協のめざすもの、果たすべき社会的役割を明らかにして挑戦していきます。
私たちは、協同組合のアイデンティティに関するICA声明と生協の21世紀理念「自立した市民の協同の力で 人間らしいくらしの創造と 持続可能な社会の実現を」を生協の事業・活動に貫きます。
私たちは、安心・信頼を育む協同の社会システムとして、協同して助け合い、分かち合う協同組合の価値を広げます。地域の誰もが参加できる生協をめざして生涯を通じて利用できる事業・サービスを創り上げ、2020年にはそれぞれの地域で過半数世帯の参加をめざします。平和で持続可能な社会の実現に向けて、積極的な役割を果たします。失われつつある人と人のつながりを新たに紡ぎ、くらしに笑顔があふれ、一人ひとりが人間としての尊厳と個性を大切に、信頼して助け合う消費者市民社会の実現をめざします。
私たちは、地域の行政との連携、協同組合間の提携、消費者団体やNPO・NGOなどとのさまざまなネットワークを広げながら、地域社会づくりに積極的に参加します。
ビジョン(10年後のありたい姿)を現実のものとするには、現状とビジョンを対比し、具体的にどう行動したら実現に近づけるかを考え、行動していかなければなりません。
ビジョンの実現に向けて、行動課題を5つのアクションプランとしてとりまとめました。
| 1. それぞれのライフステージに対応した商品事業の革新をはかり、誰もが生涯を通じて利用しつづけられる事業・サービスを構築します。 | 2. さまざまな事業の効果的な連携をはかり、くらしにおける生協利用のウエイトを高めます。事業革新の手段として、IT技術を活用していきます。 |
| 3. 事業への組合員参加とコミュニケーションを着実に前進させます。食品の安全の課題では、社会をリードする役割を果たします。 | 4. 「正直・公開」の姿勢を貫き、組合員から信頼される事業を築きます。消費者のくらしを起点とした効率的な流通経済のしくみづくりに挑戦します。商品事業における社会的責任と役割を果たしていきます。 |
| 5. 宅配事業では、ITの活用や配送・注文の仕組みの改革など新たな事業革新に挑戦します。宅配事業においてすべての都道府県で世帯数の20%以上、全国で1,000 万世帯の利用を実現します。 | 6. 店舗事業では、地域のくらしに密着し、店舗の近隣で大多数の世帯が利用できる黒字の店舗事業を確立します。そのために、食品スーパーマーケットとしてのチェーン展開をめざします。 |
| 7. くらしの保障事業では、生命・医療保障分野で、組合員とその家族から一番に選ばれる共済事業をめざします。保険商品の提供も含め、組合員の保障ニーズに総合的に応えます。 | 8. 福祉事業では、介護保険事業の損益改革を前進させ、居住系サービスを含めた新たな福祉事業に挑戦します。地域の諸団体と連携し、医療福祉生協、生協関連の社会福祉法人との関係を強化します。 |
| 1. 生協の事業・活動のインフラを活用しながら、地域社会の変化から生まれる新たなニーズに応えた取り組みを展開します。 | 2. 地域社会の中で、行政やさまざまな団体と協働しながら、高齢者世代、子育て世代、障がい者世帯、外国人など、地域のニーズに応えた相談活動や支援の取り組みを広げ、安心してくらせる地域社会づくりに参加します。 |
| 3. 社会的課題の学習機会や消費者力の向上の取り組みなどを広げます。自立した消費者市民として、くらしに関わる主体的な力を高める取り組みを地域で進めます。 |
| 1. 協同組合の価値への社会的な理解と共感を広げます。国際的な協同組合運動では、発展途上国を中心に貢献します。 | 2. 平和な社会の実現に向けて、核兵器の廃絶や戦争体験を次世代に伝える活動などの取り組みを広げます。 |
| 3. 国際協力の活動では、ユニセフを中心としながら、国連のミレニアム開発目標の実現に貢献します。 | 4. 2020年に事業における温室効果ガス排出総量の30%削減(2005年比)など、低炭素・自然共生・循環型の社会実現に向けて、環境保全に取り組みます。 |
| 5. 世界的な食料事情を見据え、日本の食料の自給力を高めていくために、食料・農業問題に取り組みます。 | 6. 安心してくらせる日本社会をめざして、国への政策提言を積極的に進め、実現に向けた取り組みを進めます。 |
| 1. 多様な組合員の関心や必要性に応える組合員活動と誰もが参加したくなる仕組みをつくり、組合員活動への参加を広げます。活動や組織の中心的な担い手の育成を進めます。 | 2. 地域社会での役割発揮ができる組合員組織づくりを進めます。 |
| 3. 生協で働く誰もが協同組合の価値を学び、雇用形態にかかわらず、組合員の願いやニーズに共感し、期待に応えられる組織風土づくりを推進します。 | 4. 男女共同参画とワーク・ライフ・バランスの取り組みを進め、女性も男性も元気に働きながら、目標を持って能力発揮ができる職場をめざします。 |
| 5. 生協全体で2020年代の担い手育成をはかります。 | 6. 経常剰余率2%以上を安定的に確保し、ゆるぎない財務体質とともに、健全な事業経営を確立します。 |
| 7. 社会に開かれた組織として信頼に応えるべく、より公正で民主的なガバナンスを構築し、コンプライアンス経営を実現しつづけます。 |
| 1. リージョナル事業連帯では、さらなる連帯の強化、機能統合を進めます。 | 2. 地域に密着した民主的な運営を一層充実させながら、県域を越えた生協づくりにも挑戦します。 |
| 3. 生協や協同組合を取り巻く法制度が、生協の組織や事業活動にふさわしく、より社会的な責任を果たし役割発揮できる法制度となるよう、働きかけます。 | 4. 全国で広報活動を連携し、生協のビジビリティ(視認性・認知度)を向上させます。さまざまな事業や活動を通じて、総合的な生協ブランド形成に挑戦します。 |
| 5. 全国の生協の力を合わせ、組合員のくらしに最も役立つ共同事業を推進します。 | 6. 日本生協連は、事業種類毎の生協の全国連合会とともに、中央会機能の強化をはかります。 |