この国を中国に滅ぼさせないためにやるべきこと

自分たちが助かりたから そのためだけに 訴えているのではない 中国 北朝鮮の独裁政権の下で苦しむアジアの同胞を助けたいから アジアに正義と平和を打ち立てたいから 歴史を語り 大和魂を語っている 大和乃風よ 日本列島に 朝鮮半島に 中国大陸に 桜吹雪となって吹き渡れ


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「彼らはなんでまた、格闘技のリングに上がろうなんて考え始めたのかね?」


 私はそこに募った“荒くれ者”たちの気持ちがまったく理解できず、近くにいる友に思わず聞いてみた。


 時折、物凄い歓声がまるで地響きのように聞こえてくる。


 おそらくはKOで勝負がついたか、あるいは激しい乱打戦となっているのだろうと、私はさほど気にもとめず、自分のセコンドについてくれる友や付き添いの妻と談笑していた。


 先ほどまで、その控え室にはたくさんの選手がいて、といってもたいがいは“荒くれ者”たちなのだが、彼らも次々に試合に行き、そしてほとんど怪我もなく満面の笑みを浮かべて帰って来る者もいれば、原型をとどめないほどに顔をボコボコに腫れさせて、今にも泣きそうな悔しそうな顔をして帰って来る者の姿がそこにはあった。


 2008年、3月30日、ディファ有明。


 それは元総合格闘家の前田日明氏がプロデュースした『ジ・アウトサイダー』という総合格闘技の第一回大会であり、そこには“格闘家”というよりも、むしろ格闘技には素人の“荒くれ者”たちが日本国中から集まり、二千人を超す観衆が詰め掛けていた。


 「幸いなことに」といったら、とてもおかしな表現だが、「なんともお恥ずかしいことに」私も彼らと同様に、少年時代を東京都内で派手に暴れまわる、いわゆる“荒くれ者”として過ごしてきたために、その第一回大会では、メインイベントに出場させていただくこととなった。


 付けられた異名は“生きる都市伝説”。


「きっと格闘技が好きなんでしょ?」


 セコンドについてくれるジローが私の問いに答えた。


「へぇ~そんなものかね。だが格闘技が好きならばキッド(格闘家の山本キッド)みたいに、こうした荒くれ者の大会ではなく、プロのリングを目指すべきじゃないだろうか?」


 私も格闘技と完全な無関係ではなかった。高校時代にはボクシングをかじったこともあれば、友人の中には格闘技を本格的にやっていて、年末の大舞台に立つ者もいたからだ。


 しかしだからこそ、余計にそこに集う“荒くれ者“たちの気持ちが、私にはまったく理解ができなかったわけだ。


「ジローさんよ、オイラは違うと思うな。
 きっと彼らは戦いたいんだよ。
 男として生まれからには、なんか胸の奥からこみ上げてくる“熱いもの”があって、それにどうしても逆らうことができず、じっとしていられないんだよ。
 男の中に流れる“戦の血”みたいなもんが、きっと彼らをかき立てて、リングにまで上げちまうんじゃないかね」


 その後も、『ジ・アウトサイダー』は幾度と無く続き、そうした中で格闘技のレベルもどんどん上がって、いつしか“素人の大会”ではなくなってしまった。


 皆が練習に練習をかさねて、「素人大会」とは言いつつも厳密には、「セミプロの大会」になってしまったわけだ。


 私は今という時代は、“国難”という意味では、明治維新と同じような時代であると共に、『水滸伝』のような時代でもあると考えていた。


 『水滸伝』とは、『三国志演義』や『西遊記』などと並ぶ「中国四大奇書」の一つで、作家・北方兼三の小説『水滸伝』によると、“蹴鞠(けまり)が上手い”というそんな下らない理由だけで、高官に召抱えられた高俅(こうきゅう)という人物が、時代を腐敗させていく中で、そんな政府に憤りを感じる役人、荒くれ者、武術家、軍師、妖術使い、美青年、さらには女性にいたるまで様々な人間が、“梁山泊(りょうざんぱく)”という水のほとりを“天然の要塞”としてたてこもり、腐敗した政府に対抗する物語だ。


 “荒くれ者”のみならず、たとえどんな過去や経歴があろうとも、民族や人種を問わず皆が天下国家を見つめて、一丸となって時代を変えるべく戦うべきであり、むしろ“荒くれ者”たちがリングばかり見つめていたり、あるいはリングの外で戦っていたら、時代はますます混沌としていくことだろうと、私はそんなことを考えていた。


 この試合の二週間ほど前の2008年3月16日、深夜未明、私のかつての悪友は死んだ。


 厳密には彼は、『ジ・アウトサイダー』第一回大会の二週間前に行われた、私の応援飲み会に駆けつけて、そしてその晩に殺された。


 目だし帽をかぶり、金属バットを持った抗争相手に西新宿で襲われて、友は殺されたのだ。

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