堀田 健一(ほった けんいち)さん/1943(S18)年生まれ。茨城県出身。堀田製作所(東京都)
1979年、2輪車に乗ることが校則で禁じられていた小学生の息子のために作った、踏み込み式ペダルの3輪自転車がはじまり。通りがかりにこの自転車を見かけた足の不自由なおばあさんが「私でも乗れる、どこで売っているのか」と尋ねてきた。障がい者の役に立つとは思いもしなかったが、その後、要望が相次いだことから片手間では無理と、半年後には本業の梱包業を辞める。銀行からは「冗談ではない」と怒られ、生活も子供の給食費が払えないほどになる。
当時は1台7万円ほどで、現在は15万円〜26万円。月平均3〜4台作るのがやっと。障がいの状況に合わせて細かい打ち合わせ、試乗を繰り返しながら部品から製作する。どんな注文も断わらない。モーター付4輪車や携帯用などもあり、世に1台しかない多様な自転車が作られている。
利用者の支援会も結成され、89年には杉並区による障害者用自転車購入助成金制度がスタート。現在では都内4区、首都圏6市に及んでいる。この間、利用客は1000人を超え、製作台数は1600台ほど。
いろいろな障がいを持つ人が自力で乗れる自転車を1台1台製作し続けて来られ、そのことが自治体まで動かしている。工作好きという特技を生かして、なりわいとしてやっていることではあるが、ビジネスにしたからこそ継続できたと思う。福祉の新しい形とも言える。
言葉にならない喜びです。日本という国だからこそ、こんな小さな仕事でも認められたのかなとも思います。部品を作る道具までひとつひとつ作ったり手間のかかる仕事ですが、歩行が不自由で落ち込んでいた人が生き生きと乗っているのを見るのが何より楽しみです。そうした皆さまに支えられて、なんとか続けています。