質問なるほドリ:東京都帰宅困難者条例、どんな中身なの?=回答・佐々木洋
毎日新聞 2013年04月03日 東京朝刊
◇「むやみに家路につかないで」 救助への支障避ける
なるほドリ 東京都で全国で初めての「帰宅困難者対策条例(きたくこんなんしゃたいさくじょうれい)」が1日から施行されたね。どんな内容?
記者 簡単に言うと「首都直下地震(しゅとちょっかじしん)などが起きた時、むやみに家に帰ろうとするのはやめよう」と呼び掛ける条例です。会社や学校にいた人たちが一斉に帰宅しようとすると、救急車が通れなくなったりして救助活動に支障が出るからです。とはいえ、帰れない人たちを放置もできません。そこで、企業は全従業員が3日過ごせる食糧などを備蓄(びちく)するよう努めなければいけなくなりました。
Q どうして3日分なの?
A 災害時の人命救助は、最初の72時間(3日)がとても大切とされているからです。警察や消防、自衛隊は「救える命を救う」ことに全力を注ぐため、帰宅できない人の安全確保まで手が回らないかもしれません。
Q 備蓄は何があればいいの?
A 都は1人につき飲料水9リットル(1日3リットル)、乾パンなどの主食9食、毛布1枚を備蓄の目安としています。中小企業などからは「定期的な買い替えも必要で、費用がかさむ」「保管場所がない」といった声も聞かれますが、都は「自分で準備して身を守る『自助(じじょ)・共助(きょうじょ)』を忘れないで」と呼び掛けています。
Q 会社や学校じゃなくて、買い物や旅行で外にいた人はどうなるの?
A 首都直下地震では、そうした行き場のない人が最大92万人に上ると予想されます。都は高校やホールなどの公共施設を「一時滞在施設」として開放する予定ですが、約7万人しか入れません。六本木ヒルズや東京ミッドタウンといった民間の大型オフィスビルなどの確保が進みつつありますが、足りないのが現状です。都は一時滞在施設になってくれたら備蓄購入の約8割を公費補助する制度を新たに作り、協力を求めています。
Q 東京都以外の自治体は対策を取っていないの?
A 国や関東の12自治体は条例とほぼ同じ内容のガイドラインを定め、管内企業に備蓄を求めるといった取り組みを進めています。首都圏の1都3県と5政令指定都市は共同で大手コンビニなどと「帰宅支援ステーション」の協定も結び、トイレや水道水を提供してもらえることになっています。(社会部)
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