
キャストとスタッフの素晴らしさ・「反骨」
キャスト・スタッフの素晴らしさです。映画からテレビへと移行する時代ですが、昭和30年代に三宅壮一氏から「一億総白痴」と皮肉を言われ、映画より下位に見る傾向があった時代に、それをエネルギーして新しいものに挑戦していこうという「反骨」精神を感じます。竹脇無我さんや栗原小巻さんを始めとする若い俳優はもちろん、三島雅夫さんや賀原夏子さん、菅井きんさん、森幹太さんなどのベテラン勢の人生観漂う演技、物語の展開と情緒を高めるカメラワークと照明、明るく情感豊かな音楽、霧笛音や電車の走行音などの効果、カラーを意識した色を彩る美術、細かい小道具への活きなど、今、観ても色褪ることはなく、何回観ても新しい発見のあるドラマであり、これからもそうあり続けるドラマです。敬子役の栗原小巻さんもフィルム映画撮影のように丁寧に作られたっと語っています。
「時代の色」が見えるドラマ@・「核家族」
全26回の脚本した山田太一さんは、テレビドラマ『それぞれの秋』「岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』などの数多くの話題作を世に送り出しています。その特徴は、「時代の色」が濃く出たドラマが多いことです。
『3人家族』では、当時人気のあった『だたいま11人』や『おやじ太鼓』など大家族ドラマではなく、「核家族」が顕著を現れていた時代をドラマに反映しました。事実、1世帯人員は1955年(昭和30年)_4.97人⇒1965年(昭和40年)_4.08人⇒1975年(昭和50年)_3.48人と確実に核家族化が進行していた時代です。
「時代の色」が見えるドラマA・「恋愛」
昭和初期は、結婚する人の70%以上が見合い結婚でしたが、昭和20年頃を境に変化しましたが、昭和40年頃までは「見合い結婚」が中心でした。事実、1966年(昭和41年度)の大都市及び中都市では、恋愛結婚:60.3%、見合結婚:59.5%と「恋愛結婚」が主流になりつつある時代でした。また、1968年(昭和43年)の平均初婚年齢は、男27.2歳・女性24.4歳(厚生労働省統計情報部『人口動態統計』)で、雄一(26歳)も敬子(22歳)も結婚適齢期にさしかかる年齢でした。
「時代の色」が見えるドラマB・「男女関係」
柴田健(あおい輝彦)と稲葉明子(沢田雅美)は、この時代の「男女関係」を象徴してと思います。昭和40年代は男女関係は大らかで、男女の友情関係があり、閉鎖的なそれ以前と開放的過ぎる今の時代の中間に位置する時代でした。キャンプファイアーで肩を組んでも、フォークダンスで手を握っても、酔いつぶれて雑魚寝しても抵抗の少なかった(暗黙の信頼感と安心感)時代のように思います。人と人の交流を通して、酒がなくても、お金がなくても、物がなくても、青春を謳歌するすべを知っていた贅沢な時代だったように思います。
いつの世を変わらない人と人の出逢いの摩訶不思議・「偶然」
柴田雄一(竹脇無我)と稲葉敬子(栗原小巻)は、初めて会話をするのは、二人が乗る国鉄(現:JR東日本)の横須賀線です。1970年(昭和45年)横須賀線の保土ヶ谷~横浜の307%の殺人的なラッシュでした。この混雑率は、「電車が揺れるたびに、体が斜めになって身動きできない。手も動かせない。」と言います。同じ路線・同じ時間・同じ車両、そして当時の殺人的な混雑と幾重の「偶然」が重なって二人は会話に結びつきます。最近のインターネットの調査でも、理想の出会いの場面を聞くと「通勤電車で見かける相手と」が上位に挙げられると言います。いつの時代も人は理屈では語れない人との出会いを求めています。
「恋愛」は考えるものでなく感じるもの・「未来」
『3人家族』では、「恋愛」は感じるもので、数値を並べて理屈で考えるものではないといメッセージが含まれているように感じます。現実には、お金も愛情の大きな要素であることが間違えあまりませんが、まだ純愛が大きな時代でした。これは、二人が今が何を持っているかより、これから何をするかの「未来」を重視していることとも言えます。「3人家族」の柴田家と稲葉家は、それぞれハル(菅井きん)と兼一(森幹太)が加わり「4人家族」になり、そして、雄一(竹脇無我)と敬子(栗原小巻)が結婚して「3人家族」へ、家族の歴史が作られていきます。
同じ時代を生きる親しさと怒り・「断絶」
昭和40年代は明治・大正・昭和と波乱の時代を生きた人々が、同じ時代を作っていった面白さがあり、逆に対立の原因となり、「親子断絶」の流行語も生れました。元フォークルセダ−ズのメンバーの北山修さん(精神科医師・元九州大学医学部教授)は、上の世代が「戦争も知らないくせに」の言葉にに反抗して、「戦争を知らない子供たち」を作詞しました。しかし、「戦争も知らないくせに」の言葉には、まだ経験が少ないことを戒めることと、反対することで若者に覚悟を促す意味を込めたと後日、北山修さんは語っています。耕作(三島雅夫)が、ハル(菅井きん)に子供たちの知らない戦争体験を話す場面もあります。
人生のターニングポイントを描く・「転機」
柴田雄一(竹脇無我)の海外留学試験と稲葉敬子(栗原小巻)との結婚、柴田耕作(三島雅夫)の定年退職と春日ハル(菅井きん)との再婚、柴田健(あおい輝彦)と稲葉明子(沢田雅美)の大学受験と、誰もが避けることのできないそれぞれの人生のターニングポイントを半年間の短い時間軸に凝縮して描きます。まさに人生の「転機」を描いたドラマです。
また、山田太一さんが脚本家として、あおい輝彦さんは俳優としての原点となり、ドラマを作った人も、出演した人も、観た人もそれぞれのターニングポイントになったドラマのように思います。
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