竹島に上陸した韓国のイ・ミョンバク大統領。歴代の韓国大統領として初めてのことです。大統領はさらに天皇陛下が韓国を訪問するなら謝罪すべきだと発言。
韓国大統領の真意は
前例のない言動に日本政府は強く抗議しました。アメリカは日米韓3か国の協力関係への影響を懸念。韓国の強硬姿勢の背景に何があるのでしょうか。
韓国イ・ミョンバク大統領の竹島上陸、そして香港の活動家の尖閣諸島上陸と衝撃的な事件が続きました。竹島上陸について大統領は、去年12月に京都で行われた日韓首脳会談で、いわゆる従軍慰安婦の問題をめぐって、野田総理大臣が消極的な姿勢を示したことへの不満が今回の行動につながったとしています。14日には「天皇陛下が韓国を訪問したければ、独立運動で亡くなった人たちに謝罪すべきだ」と発言。外交上の配慮を欠き、日本国民の神経を逆なでする挑発的な言動は、日韓関係を大きく損なう結果となりました。
未来志向を唱えてきたイ・ミョンバク大統領が、これほど強硬な姿勢を取った背景には、任期が残り半年となり求心力が大きく低下していることがあります。強い大統領として名を残したいという思いがあったのではないかという見方があります。
ソウルの塚本支局長に聞きます。イ・ミョンバク大統領の強硬な姿勢の真意は?。また、これから韓国はどうしようしているのでしょうか?。
【塚本壮一ソウル支局長】
大統領には、日本と良好な関係を築こうとしたのに、日本が応じてくれなかったという思いがありました。不満がそれまでの反動となって噴き出したようです。大統領なりの計算もあったように思います。政権の「正統性」の証を国民に示す。それによって自らの影響力を次の政権に残そうとしたのではないかというものです。韓国人にとって竹島は領有権の問題ではありません。日本による植民地支配という屈辱の歴史の象徴です。島に上陸したことそれ自体に反対する人はいません。大統領は、それがわかっていました。
ただ、政界やメディアからは懸念も出始めています。韓国大統領府も、国際社会に対して韓国は冷静に対応しているとアピールためもあって、「日本との関係を根幹から揺るがすつもりはない」という姿勢を示しています。しかし、実際に日本との間で合理的な外交が展開されるまでには、なお時間がかかるのは間違いありません。今年12月の大統領選挙はもちろん、次の政権の対日政策にも影響が及ぶおそれもありそうです。
日韓関係の悪化は東アジアの安全保障にかかわる問題だけに、アメリカは懸念を強めています。アーミテージ元国務副長官らは15日に日米同盟に関する報告書を発表し、日米韓の協力が地域の安定と繁栄に欠かせないとして、緊張緩和のために日韓だけでなくアメリカにも外交的な努力を求めました。
Q.解決は難しいのでしょうか・・・?
日本政府はきのう竹島問題の解決に向けて国際司法裁判所に共同で提訴することを韓国に提案しました。
これに対して韓国は拒否する考えを示しましたが、日本としてはこの問題について国際社会に日本の立場を訴えていく方針です。日韓関係は当面停滞は避けられそうにありませんが、民間レベルの交流や経済活動などへの影響を極力避けることも必要になってきます。言うべきことを言うのは当然ですが、同時に緊張をこれ以上高めないように冷静かつ毅然とした対応が求められます。
竹島と尖閣諸島だけでなく、先月はロシアのメドベージェフ首相も北方領土の国後島を訪問しました。内政に揺れる野田政権の足もとを見透かしたような日本の領土へのあいつぐ不法上陸は、日本の影響力や発言力の低下を象徴しています。ねじれ国会のもとで主導権争いに明け暮れず与野党双方がもっと外交に目を向けて欲しいものです。日本の国益のためにも政治の不安定、不透明感を解消することが何よりも必要だと思います。
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