東京地裁は2月25日、朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)の土地・建物の競売を公告した。会館売却に対して総連側は、今まで債権者である整理回収機構(RCC)と協議を進め、民主党政権時には第三者への任意売却で合意。見返りとして北側は拉致問題の再調査などを提示していたという。しかし競売回避はできず、総連内には冷めた雰囲気が広がっているという。
総連のシナリオは、総連の意を汲んだ第三者に任意売買で会館を購入してもらい、競売を回避することだった。ある総連関係者によると、任意売買の額は40億円台前半。現・元を問わず、総連系商工人からの資金集めもある程度進んでいたという。
関係者によると、民主党政権時代には、日本政府と総連の間で任意売買の約束が交わされていたという。その代わりに北当局は、日本人拉致被害者の再調査を打診するとされていた。総連側は南昇祐副議長を窓口とし、平壌で金正恩をはじめとする政府高官に善処を依頼していたという。
拉致問題の再調査は、北側にとっては大きなカードだ。民主党政権は再調査が「拉致問題は解決済み」と主張する北の姿勢を崩すきっかけになると、力を入れて取り組んできた。
会館の任意売却と拉致問題再調査の交渉は、昨年11月のウランバートル、同12月の北京での日朝会議で行われる可能性があった。時を同じくして総連の許宗萬議長は、周囲に「11月にはいい報告ができそうだ」と話している。
ところが実際に競売は回避できなかった。ある総連関係者は「職員らは会館の競売はある程度覚悟している。それよりも今は高校無償化のことに集中する雰囲気だ」と話す。競売のことを口にする人もいないという。
競売にかけられる土地は約2390平方メートル、建物は延べ床面積1万1740平方メートル(地上10階・地下2階)で、近隣には大学や病院もある。都心の好立地ではあるが、建物の特性上、「取り壊して建て直さないと活用の見込みはない」(不動産関係者)という。
総連側には競売によって買い戻すという手が残されている。入札の下限である買い受け可能価額は約21億3500万円。昨年来の商工人への働きかけの結果、ある程度の資金も集まっているものとみられる。
入札期間は3月12~19日で、26日に開札。29日には売却先が決まる。 |