中国経済の変調に追い打ちを掛けるのが「チャイナ・リスク」だ。沖縄県・尖閣諸島をめぐる昨年の大規模な反日暴動は、中国に進出している各国を脅えさせるには十分すぎるほどの事件だった。今年1〜2月の日本からの直接投資実行額は前年同期比6・7%減。世界からの対中直接投資額も1・4%減と、外資系企業が中国進出を見直す動きは止まらない。
こうした状況にもかかわらず日本企業への嫌がらせが続く。ソニーとオリンパスの医療機器の合弁会社は中国当局の審査の遅れを理由に設立が計画より3カ月遅れとなった。JFE系とIHI系の造船事業統合や、大和ハウス工業によるフジタ買収でも同様の事態が起こった。
日本企業以外でも中国の政府系メディアによる米アップルなど外資バッシングが過熱している。
今井氏は「中国経済が抱えていた問題点が噴出している。習主席が信頼する劉源氏(劉少奇元主席の息子)は、尖閣問題で日本との対立をやめるように提言していると聞く」と語る。領土的野心をむき出しにする中国がそこまで追い詰められているということか。
セキュリティー面でのリスクも深刻だ。在中国の米国商業会議所は3月29日、「中国で活動する米企業の4社に1社がデータや機密情報の盗難などの被害を受けている」と公表。ソフトバンクによる米通信大手スプリント・ネクステル買収計画についても、米政府はZTEや華為技術(ファーウェイ)などの中国製通信機器を事実上使わせないようにするなど神経をとがらせている。
追い打ちをかけるのが鳥インフル問題。2003年には新型肺炎SARSが大流行した。上海の邦銀社員は「あの時は中国内や中国と海外との行き来が制限された。人や物の流れが滞れば、日系企業の活動はもちろん、中国や日本の景気にも悪影響が出る」。
人件費の高騰で“世界の工場”の座も東南アジアに奪われつつあるなか、巨額債務の「時限爆弾」が破裂する日が来るのか。
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