中国の習近平国家主席体制が始動したばかりだが、屋台骨を支える経済の「安定成長」路線に危険な兆候がみられる。主要企業の業績は悪化し、過剰投資のツケで債務は拡大、「反日暴動」をはじめとする外資イジメもエスカレートし、「世界の工場」の座も危うい。ここにきて鳥インフルエンザ感染問題も影を落とす。中国の存在感拡大のほぼ唯一の源泉だった成長経済が崩壊すれば、習体制も権力の基盤を失いかねない。
1日に発表された、3月の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)は4カ月ぶりに改善。今月発表の1〜3月の国内総生産(GDP)も「8%成長」への回復が予想されるなど、習体制のスタートを祝うかのような“良い数字”が並ぶ。
ただ、個別の状況をみると、かなり様相が異なる。太陽電池最大手の尚徳電力(サンテックパワー)が破綻したことは記憶に新しいが、世界第5位の携帯電話機メーカー、中興通訊(ZTE)も3月27日に発表した2012年12月期決算が28億4000万元(約431億円)の最終赤字に転落。自動車・電池メーカーのBYDの最終利益は94%減となった。
山一証券出身の国際エコノミスト、今井澂(きよし)氏は「中国企業は研究開発費が圧倒的に少ない。自動車メーカーも、海外企業との合弁はうまくいっても、独自技術はほとんどない」と指摘している。
内需関連の企業も厳しい。ラオックスを傘下に入れている家電量販最大手の蘇寧電器は44%減益、2位の国美電器は赤字転落している。
2008年のリーマン・ショック以降、中国は政府主導で内需拡大策として巨額な投資を実行してきたが、ここにきて需要低下に悩まされている。今井氏は「売上高を伸ばしている企業も、売掛金の増加や押し込み販売、顧客の支払い条件緩和などによるものが多い。企業は運転資金が必要になり、ヤミ金融にも相当依存している」とみる。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米系金融機関幹部の見解として、「2008年以来、中国の公共と民間の債務はGDPの200%以上にまで膨らんでいる。まだ中国の金融システムや経済成長へのリスクとみなされていないものの、発展途上国では前例のないレベルだ」として、「中国が抱える債務の爆弾」への懸念を示している。実態をかさ上げするためにつぎ込まれた資金は、企業の過剰債務、金融機関の不良債権に化けている恐れがある。