先日、田舎に住む父親が都内の自宅に泊まりに来ました。父は花粉症や激務のせいか、就寝中にうなり声やいびきを繰り返し、私にとっては大変寝苦しい夜となりました。
それと同じく気になったのは、臭いです。整髪料なのか加齢臭なのかは分かりませんが、父が使った枕にはしっかりにおいが染みついていました。過剰反応は申し訳ないと思いつつ、父の帰宅後、早速洗濯をしてしのぎましたが……。
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宇宙開発でも「臭い」を巡る問題の解決は重要なテーマです。この春からある高機能ワイシャツが店頭に並びます。東レとアパレルメーカーが宇宙滞在者向けに開発した消臭技術を応用した「臭わない」ワイシャツです。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の産業連携事例集によると、宇宙飛行士が地球に帰還した時、「宇宙船のハッチをあけるととても臭う」ということを東レの担当者が聞きつけたことが商品化のきっかけだといいます。国際宇宙ステーション(ISS)などの宇宙空間では入浴や洗濯ができません。東レはナノテクノロジー技術を使い繊維に特殊加工を施し、消臭効果のある素材「ムッシュオン」を開発、シャツ製造大手のフレックスジャパンがワイシャツに仕上げました。
スポーツウエアなどを手がけるゴールドウインも、加齢臭を82%、汗のにおいを92%減らす素材を使った「宇宙下着」を一般向けに開発しました。宇宙開発のために生まれた技術の産業応用は、衣服にとどまりません。はるか天空から茶葉の成分を観測して最適な摘み取り時期を予測したり、サンマなどの魚群を探知したりする手法もあります。
政府は衛星の画像を民間企業や自治体に利用してもらうべく、2014年度中にデータベースとして公開する予定です。農業や漁業だけでなく、資源探査や災害防止などにも一役買うことになるでしょう。
JAXAは、宇宙の魅力を「地上の生活者」へ届けるため、「JAXA COSMODE」というブランドを08年に立ち上げ、企業などとの連携を加速しています。
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先日、欧州宇宙機関(ESA)が宇宙の年齢について、これまで考えられていたより約1億年長い138億年とする研究を発表しました。宇宙誕生のビッグバンから間もないタイミングで放たれた光を解析した結果です。子どもの頃、父と「宇宙は無限か、有限か、その先には何があるのか」という問答をしたことを思い出します。
当該年齢の方々には恐縮ですが、再び加齢臭の話に戻ります。
宇宙という極限空間で過ごすために開発された素材は、寝たきりとなった高齢者向け衣類など医療や介護の現場でも役立つ可能性を秘めています。父は大のお風呂好きですが、加齢にはかないません。宇宙技術は、地上での生活も快適にしてくれる可能性を秘めています。
(杉)
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