解説・宇宙の謎解く暗黒物質に迫る4月4日 16時40分
宇宙の成分の4分の1を占めると言われながら、直接観測することができなかった謎の物質「暗黒物質」について、国際的な研究グループが、暗黒物質の痕跡を捉えた可能性があると発表しました。今回、痕跡が捉えられた可能性のある暗黒物質は、宇宙のあらゆる場所に存在すると考えられていますが、直接見ることも感じることもできない未知の物質です。
暗黒物質は、私たちが生活している場所にも飛び回っていると考えられますが、光を出さず、私たちの体でも部屋の壁でも何でもすり抜けてしまいます。
この存在は、今からおよそ80年前、スイスの科学者、フリッツ・ツビッキーが考え出しました。
ツビッキーは、たくさんの銀河が集まった銀河団を観測していました。
すると、銀河団の中を動いている一つ一つの銀河が、見えない物質による強力な重力によって引っ張られ、飛んでいくことなく、銀河団としてまとまっていることを見つけたのです。
この見えない物質が、「暗黒物質」と名づけられました。
詳しい研究の結果、暗黒物質は、私たちの目に見える通常の物質のおよそ5倍あり、宇宙全体のおよそ4分の1を占めることも分かってきました。
暗黒物質は、星や銀河、さらに銀河の集まった銀河団など、宇宙の大規模な構造がどのようにしてできたかを解く鍵と考えられているため、世界中の研究者がさまざまなアイデアで見つけ出す実験を行っています。
その1つが、今回発表を行った研究グループの実験です。
暗黒物質は直接見ることができないため、研究グループでは、暗黒物質どうしがぶつかったときにできると考えられている「陽電子」という粒子を観測しています。
観測装置を、国際宇宙ステーションに取り付けて観測を行った結果、考えられていたよりも多くの陽電子を観測することができたということで、これが暗黒物質どうしがぶつかったときにできたものではないかと考えているのです。
日本でも、暗黒物質を観測しようという実験が進められています。
東京大学などで作る研究チームでは、岐阜県飛騨市にある神岡鉱山の跡地に巨大な実験装置、「XMASS」を造り、暗黒物質を見つけようとしています。
XMASSは、マイナス100度に冷やした液体のキセノンという物質をタンクに入れ、微弱な光を検出できる装置です。
暗黒物質はきわめてまれですが、キセノンなど通常の物質とぶつかり、ごく弱い光を出すと考えられています。
研究グループではこの弱い光を検出することで、暗黒物質の存在を確かめようとしています。
日本開発の装置も観測開始へ
暗黒物質の解明を巡っては、日本が開発した装置も、来年度から国際宇宙ステーションで観測を始める予定です。
これは、JAXA=宇宙航空研究開発機構や早稲田大学、神奈川大学などのチームが開発を進めている「CALET」と呼ばれる装置です。
電子や陽電子などを観測でき、「暗黒物質の痕跡をとらえた可能性がある」と発表されたAMSという装置に比べ、10倍以上のエネルギーを持つ電子や陽電子を検出できるということです。
この観測装置は、来年度、日本の宇宙輸送船「こうのとり5号機」で国際宇宙ステーションに運ぶ計画で、日本の実験棟「きぼう」の船外の部分に設置されるということです。
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