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やるせない気持ちを、あえて曲のテーマに phatmans after school


札幌在住の4人組ロックバンドphatmans after schoolが4月3日、メジャー1stシングル『メディアリテラシー』をリリース。’11年秋にミニアルバム『ボクノバアイハ』でメジャーデビューしてから約1年半をかけて誕生した新作は、若者の葛藤を鋭い言葉、躍動するリズムと音に乗せた「生きた」サウンドになっている。迷いの時期を越え、メンバーが自信をもって送り出せる作品が生まれたわけとは? フロントマン、ヨシダタクミを中心に訊いた。

自分を見つめ直すことと楽曲制作に費やす時間だった

――メジャーデビューから約1年半ぶりのリリースとなりましたが、まずその理由から教えてもらえますか。

ヨシダタクミ(Vo.&G.)「全曲、僕が作詞・作曲をしてるんですけど、そんなに生産ペースが速くないんです。絶対納得できる作品を作りたいから、リリースに追われて適当な曲を出していくっていうのは嫌で。今後、短いスパンで出して行くことになったときのために、もっと書く力を付けなきゃいけない。でもなかなかうまくいかなくて、スタッフに“もっといい曲を”と言われると何書けばいいんだろう?って迷った時期があって。メンバー、スタッフ含めて話し合って、しばらく自分を見つめ直すことと楽曲制作に費やす時間を作ろうということになったんです。で、その途中でスタッフから“誰か外部の人を入れてみるのはどう?”っていう提案が出て。音楽プロデューサーとして飯濱(壮士/ame full orchestra)さんを紹介されたんですね。以前から存在は知っていたけど、あまり接点がなくて。最初はちょっと構えたんですけど、話してみたら共通点も見つかって、すぐに打ち解けましたね」

――音楽的な影響や変化も大きかったですか?

ヨシダ「相当ありました。新しいエッセンスを入れてもらったおかげで、僕には想像つかないようなアイデアが出てきたり。僕からメンバーに伝えにくいことも飯濱さんを介して言えるようになったし。飯濱さんはギタリストだから、いちばんユタニのギターがパワーアップしたなと思いますね。飯濱さんが入ったことは、いろんな意味で転機というか。うちのバンドって、以前はライブの打ち上げにまったく出なかったんです。正直、楽しいものだと思ってなかった(笑)。だけど飯濱さんに“みんな普通にしゃべってたら好かれそうなのに、他の人としゃべる機会を減らすのはもったいないよ”みたいなことを言われて。打ち上げとか集まりに積極的に出てみるようになったら、すごく楽しかったんですね。今ではネットワークが広がって、一気に札幌での知り合いが増えた。“みんなと繋がろう精神”が芽生えました(笑)」

――音源を聴いても変化を感じました。タクミくんの作る曲の特徴的なリズムは変わってないと思うんだけど、各楽器がすごく歌ってるというか、躍動感が増してますよね。

ユタニシンヤ(Gt.)「レコーディングのときに飯濱さんから“綺麗に弾かなくてもいいから生きてる音のテイクを残したい”って言ってもらって、それを意識して弾いたんです。1年半くらい空いたのも、すごく必要な時間だったなと思っていて。いろいろ悩んだこともあるんですけど、自信もって気負うことなくやれるようになったので。それが音に出たんだと思います」

辛くても芽生えた感情を忘れないうちに書ききる

――『メディアリテラシー』というタイトルは、少し社会派の匂いがしますね。

ヨシダ「そうですね。ネットが普及して溢れてきた情報の中から、ちゃんと自分の力で正しいものを読み取る能力って意味らしいんですけど。まず僕は曲作るとき、だいたいテーマを決めるんですね。この曲は、とある国で女の子が車に轢かれたのを通行人がスルーしたことで、その人が死んでしまったっていうニュース映像を観たことから始まったんです。そこだけ取ったら、どんな国よ?って思うじゃないですか。でもその国では転んだ人を助けたら、逆に“この人に突き飛ばされた”って訴えられたりする状況もあったりで…、悪いな、かわいそうだなと思いながらも知らないふりをする。そういうことだったんです。
自分も国が違ったりして同じ状況だったら、通り過ぎていくひとりになる気がする。助けたいっていう僕らのほうが、逆の立場なら偽善に見えるかもしれない。そういうことって小さいことから大きいことまでよくあるよなって。いじめに関してもそうだし、今の若者のテーマにも即してるかなと思って。すごくやるせない気持ちになったんですけど、あえて曲のテーマにしようと思ったんです」

――ヘヴィーなニュースを咀嚼しながら歌詞を書いていくのも、かなりヘヴィーな作業だったのでは?

「そうですね。僕は曲作りに入るときって一日じゅう音楽を聴くんです。ずっと同じ曲を聴いたり、YouTubeで泣ける動画とか観るんで、入り込みすぎて辛いこととかもあります。でも、その日のうちに書ききらないと芽生えた感情を忘れちゃうこともあるんで。なんとか書ききって、次の日冷静になったときに直すことはけっこうあります。そういうふうにして書いた詞をいちばん最初に飯濱さんに見てもらうんですけど、“テーマすげぇいい”とか“ここがいい”とか言ってほしいことをピンポイントで言ってくれる。それがすごくうれしいですね。誰かが共感してくれてるってリアルに感じられて。メンバーは歌詞にはあまり反応してくれないんで(笑)」

――励ましのメッセージではなく、ただこう思う、という歌詞を書く理由はありますか?

ヨシダ「自分が影響受けてきたアーティストが、そういう傾向が強かったのかな。個人へのメッセージより、バンプ(・オブ・チキン)とかサザンオールスターズ、カーペンターズと自分が思ってることを淡々と書いてるアーティストが好きだったんで。だから自分もそういう書き方になったんだと思います。あとは僕の性格じゃないですか。強く発信する勇気はあんまりない。こう思うんだけど、他に思う人いるんじゃない?ってくらいの感じ。そこに同調してくれる子がうちのリスナーには多いような気がします」

曲を作るときは常に中学のときの自分を意識する

――目線としては、主にティーンエイジャーに向けてますよね。

「それはありますね。僕がいちばん好きなアリナシの判断っていうのは、中学生のときの自分が見てどう思うか、聴いてどう思うかなんで。当時使ってた携帯を今も残していて、たまにそこに入ってる着メロとか着うたを聴くんですよ。そうすると、自分は何を好きだったか思い出せる。音楽やりたいと思ったのは中学のときで、その頃聴いてた音楽をかっこいいと思ったからで。今夢叶ってやってるのに、そこがズレたら、自分のやりたかったことが初志貫徹できてないんじゃないかって気がするっていうか。かっこいいなと思うものは変わりましたけど、作るときは常に当時の自分の目線を意識する。そのほうが届くような気がするんです」

――カップリングの『1○歳』も、すごくティーンネイジャーの目線を感じます。声もあえて高めにして歌っていますか?

「そうですね。声色をちょっと変えて。ヴォーカルも言ってしまえば楽器の一種なんで、統一性はなくても、この曲にはこの歌い方っていうのがあっていいんじゃないかと。そこに触れてもらえるとうれしい。リスナーがtwitterとかで指摘してくれたりすると喜んで返事しちゃいます(笑)」

――今回も曲を聴いた人の反応が楽しみですね。

ユタニ(Gt.)「はい。修行みたいな感じで1年半潜ってましたが、今年からダーン!っていう感じで新しいファットマンとしての楽曲をやっていきます。その最初の1枚なので、ぜひ聴いてほしいです。Bメロのギターが個人的に気に入ってるんで注目してください!」

ホンマアツシ(Dr.)「ユタニも言ってますけど、本当に進化した、自信に溢れた新しいファットマンになった感じがするんです。生きた音、曲のノリがすごく出ていると思うので、そういうところをじっくりと何度も聴いてほしいです」

ヤマザキヨシミツ(Ba.)「ノリノリなんで、ノリノリで聴いてください!」

ヨシダ「バンドとしては各パートに憧れてほしいというか。成長していく過程を見せるのもバンドの醍醐味というか、使命だったりすると思うんで。そこを感じてほしいです。個人的には、自分の書いたものにより多くの人が共感してくれたらな、と。将来的には“ユタニさんのギターかっこいいです!”みたいなギターキッズが増えてきて、スコアとか出て。より多くの子たちが僕らの音楽に触れてくれれば、これ以上うれしいことはないです」

phatmans after school(ファットマンズアフタースクール)
’10年、北海道で結成された平均21歳の4人組。’11年11月、ミニアルバム『ボクノバアイハ』でトイズファクトリーよりメジャーデビュー。すべての作詞・作曲を行うヨシダタクミが作り出す卓越したメロディー、グルーヴを持ったリズム、若者が抱える葛藤や大人への憂いなどを鋭く表現した歌詞は、 すべてのティーンエイジャーに捧げられたメッセージとして大きな共感を呼んでいる。

『メディアリテラシー』
¥1,200 TFCC-89423 
2013.4.3 on sale



01. メディアリテラシー
02. 1○歳 (ジュウマルサイ)
03. 無重力少年 (y0c1e remix)

phatmans after school『メディアリテラシー』発売記念ミニライブ in SAPPORO

2013.5.25(Sat)
OPEN 16:30 START 17:00
会場:経専音楽放送芸術専門学校 Kissホール(札幌市豊平区平岸3条2丁目)
出演:phatmans after school
料金:無料
<イベント参加方法>
予約者優先で、『メディアリテラシー』を対象店舗で購入すると「イベント参加券」を配布。詳細は公式HPまで。

phatmans after school × 2gMonkeyz ダブルレコ発LIVE 『さるくま合戦』
2013.5.17(Fri)
OPEN 19:00 START 19:30
会場:KRAPS HALL(北海道札幌市 中央区南4条西6丁目5−1)
出演:phatmans after school/ 2gMonkeyz
料金:adv.¥2,000 /day.¥2,500(1ドリンク¥500別途)
問:KRAPS HALL 011-518-5522
LAWSON TICKET L-14871


http://phatmansafterschool.com/

https://itunes.apple.com/jp/album/media-literacy-single/id626098783















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