社説:大相撲八百長 「勇み足調査」の検証を

毎日新聞 2013年04月04日 02時30分

 大相撲の八百長問題で日本相撲協会から解雇された元幕内力士・蒼国来(そうこくらい)(29)が再び土俵に上がることになった。「八百長を裏付ける証拠はない」として解雇処分は無効とする東京地裁の判決を受け、相撲協会が控訴を断念したことで約2年3カ月ぶりの復帰が決まった。

 25人もの力士と親方が角界から追放された不祥事は11年2月、携帯電話のメールで発覚した。携帯メールに名前があったのは13人で、蒼国来ら12人は物的証拠のない中、八百長の仲介役を務めた元恵那司(えなつかさ)らの供述などで関与が認定された。

 蒼国来は一貫して関与を否定していたが、10年5月場所の春日錦戦で「故意による無気力相撲」を行ったと認定され、11年4月に引退勧告処分を受けた。だが、勧告に応じなかったため3日後に解雇された。

 相撲協会を相手に蒼国来が地位確認などを求めて起こした裁判で元春日錦は一度も出廷せず、元恵那司は別の複数の力士と複数回、仲介したことを証言したものの、元春日錦との取組については明言を避けた。

 判決は元春日錦の供述について多くの疑問点があると指摘し、過去において無気力相撲に関与した可能性に触れたが、春日錦戦については有力な証拠はないと結論付けた。供述の信用性について慎重な検討が足りなかったためで、刑事裁判における冤罪(えんざい)と同じ構図だ。

 相撲協会は当時、公益財団法人認定に向けた組織改革を行っている最中だった。八百長問題の幕引きを急ぐあまり、慎重に進めるべき調査がずさんだったと指摘されても仕方がない。その反省に立ち、相撲協会には、複数の弁護士も加わっていた特別調査委員会の手法に問題がなかったかの検証と公表を求めたい。

 控訴断念を決めた理事会後、北の湖理事長は蒼国来に直接謝罪したという。解雇された当時、蒼国来は初土俵から7年かけて幕内に上がって間もない時期で、活躍が期待されていた。敗訴の責任を放駒前理事長ら当時の執行部に押しつけず、北の湖理事長自ら頭を下げたことは、蒼国来の名誉回復につながるだろう。

 蒼国来が最後に土俵を務めたのは11年1月場所。心技体の充実なくして土俵に上がれない大相撲で2年間のブランクは想像以上に大きい。解雇後もジムでのトレーニングなどで体を鍛えていたとはいえ、体重100キロ以上の大男がぶつかり合う本場所ではけがのリスクは極めて高い。力士としての体作りが必要だ。

 その点では、稽古(けいこ)のための約3カ月間の猶予期間を設け、7月場所で解雇時の西前頭15枚目での復帰を認めるとした相撲協会の判断は妥当だと言える。

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